父 ページ27
酎達の助けもあってなんとか脱出した者達はただ呆然と崩れ行く夢の跡を眺めていた。
｢……｣
静流は左京とのことを思い返しながら手の中のS.Nと書かれたライターを握り直す。
｢…桑原さん、それ……｣
静流の斜め少し後ろに立っていたAだけが、それに気付いた。
そして、直ぐに理解した。
それが左京の物であることを。
小さく顔を歪めたA。
それに気付いた静流ははっとそうだ彼女は…と思い直し、切なそうに眉を潜めながら口を開いた。
｢…そうよね、これは私が持っているべき物じゃないわ。｣
静流は、ゆっくりとAにそれを差し出す。
しかしAは、それを両手で押し返して首を横に振った。
｢…A。｣
｢はい。｣
そんな2人を横目に見ていたコエンマがAに声を掛ける。
｢お前に左京から伝言を預かっている。｣
ピクリと、なんとか笑おうとしていたAの口元が不自然に下がる。
｢“好きなように生きろ”…だそうだ。それから“もっと早く言ってやるべきだった”ともな。｣
“お前、あやつのことはどうするつもりだ！永遠を誓った仲なのだろう？！”
“…Aは確かに年端もいかない子供です。しかしあの子には…彼がいる。”
｢何故、そんなことを…｣
｢…お前がそう言うだろうと、左京は読んでいたんだろうな。｣
“蔵馬くんには娘をよろしく、とお伝えください。”
｢蔵馬に“娘をよろしく頼む”と言い残して行きおった。｣
それを聞いたAは、ついにその瞳から涙を零した。
堪えていたはずの涙が次から次へと流れ落ちる。
｢お父さん…｣
Aは呼びたかった。
再び父と、呼びたかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もこ(プロフ) - シンアさん» ありがとうございます！更新、遅くなってすみません…… (2019年5月26日 23時) (
レス) id: fb2eac157c (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続き気になります(*⌒▽⌒*)更新楽しみにしてます(*⌒▽⌒*) (2019年5月17日 13時) (レス) id: f6e4c29514 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこ | 作成日時：2019年4月18日 1時
