それを夢にはしたくない【REBORN】 (ページ13)

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鳶かく語りきページ13

六道を振り返ったAは笑みを浮かべながら口を開いた。

｢待ってたのよ。流石ね。劣勢コピーとは言え私の分身だけのことはあるわ。｣

Aの不可解な言動に沢田はもちろん、六道さえも眉を顰める。
Aはそんな2人の様子に更に笑みを深くして言葉を続けた。

｢あら、知らないの？六道骸。貴方はね、“第二の私”を作ろうとして産まれた失敗作なのよ。｣

それは、当事者である六道さえも知らない過去。

Aは2度名前を変えている。
最初の名前はA・山口・アバーテだった。
イタリア人の父と日本人の母を持ちイタリア人として育ったがダブルネームには日本人としての苗字が刻まれていた。
そんな彼女がその名を捨てたのはエストラーネオファミリーが完全に崩壊した時、つまり六道によって両親が殺された時である。

｢痛い、痛いよ、母さん…｣

｢我慢なさい、あなたなら出来るわ。｣

Aの両親はエストラーネオファミリーの研究者でありAは最初の実験体だった。
Aの幼い頃の思い出といえば、専ら身を焼かれるような、内側から消滅してしまいそうな、そんな強烈な痛みの記憶ばかりだ。

どのくらい、痛みに耐えていただろうか。
Aは、朦朧としていた意識が一気に明瞭になって行くのを感じた。

｢せ、成功だ…｣

自らに刻まれた知らないはずの記憶。
間髪入れず流れ込んでくるそれらを掻き分けて、Aは自らの父を見た。
久しぶりに見たその顔は、心からの喜びで醜く歪んでいた。