こういうのが読みたい4 (ページ41)

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それからは、1人が佐久間と戦い、ある程度のところで攻撃を仕掛け興味を自分に向かせ、もう一方は休憩、を繰り返した。体力が人の倍はあるのではないかと思われる佐久間を疲れさせるのは難しく、深澤と渡辺は息を荒らげながら、たまに傷を負いながら、彼の相手を続けた。

ナイフを繰り出す速度が、遅くなってきたのを感じた。渡辺は、佐久間の相手をしながら、つぎに深澤が相手をするようになった時、薬の打ち込みを実行しようと決めた。

佐久間の背後から攻撃を仕掛け、かわすべく意識が深澤に向いた瞬間、渡辺は手に持った銃をそのままにポケットから出した注射器を、佐久間の首元に突き刺して中身を押し込んだ。

佐久間の真っ赤なナイフは手から落ちて床上を滑り、血で染った手が痛いと首元を押さえる。即効性の薬が効いてきたのか、両膝ががくりと折れ、そのうちに体が床に転がった。

「終わった……」

と、口から小さく言葉が漏れて、渡辺と深澤も床に座り込んだ。今まで感じなかった痛みが静かに渡辺を襲う。見えるだけでもいくつかスーツが切れ血が滲んでいた。

「なんで、暴走なんか……」

初めて暴走に遭遇したのか、深澤が眠る佐久間をのぞき込みながら不思議そうに問うた。

「……阿部と佐久間、昔、研究所にいたろ。その時の研究の後遺症で、まれになるんだ」

人間は暴走しない。自分はする。だから「人」ではなく「モノ」なのだと。「兵士」ではなく「兵器」なのだと、いつか彼が自虐していたことがあった。

渡辺は、白い顔を返り血で汚し、ぴったりと瞼を閉じて眠る佐久間を見つめる。

それでも俺は、人間だと思う。

深く眠る彼に、届いているだろうか。