こういうのが読みたい4 (ページ29)

今日:34 hit、昨日:15 hit、合計:88,046 hit

WOLF 3 □ ページ29

「ぎゃん！？」

「うわ、ごめん！」

寝ていたところ、しっぽへの鋭い痛みで飛び起きた。俺の横で、主は床に座り込んでいた。

寝ようと声をかけたのだが、まだ仕事が終わっていないと言われ、机の下でうとうとしていたのが数時間前の話。部屋の電気は落とされ、机の電気だけが部屋を淡く照らす。

主はよたよたと立ち上がろうとするも、また床に手を着く。理由は知らないが、右目が見えていないのだという。

「痛かったよね、ごめん」

気にするな、と声を掛けても、しっぽを撫でられる手が止まらない。

「…佐久間も、痛かったんだろうな」

さくま。
誰かの名前も、よく出てくる。

こんな日は寝てしまった方がいい。
こんな日というか、こんな夜遅くというか。

彼の名前が出た次の日には、きっとまたあの石だらけの所に行く。ひとつの石を見つめて、主はしばらく動かない。

「…痛かったよね。ごめん」

「守れなくて、ごめん」

と、その石にそう言うんだ。