EAT ME 2 いわラウ ページ24
食べられちゃう 逃げないと、
ラウールは夜の路地裏をひた走っていた。やっと抜け出せた屋敷からの追っ手が、血眼になって彼を探している。
殺されちゃう
回復期でカバーできない量を食べられたら、それは自身の死に繋がる。それは屋敷の中で、身をもって体験したこと。
彼はケーキ。屋敷の人間はフォーク。ケーキはこの世に少ないため、幼い頃捕らわれてか閉じ込められることがある。それか、食い尽くされるかの2択だ。
居たぞ！と遠くに声がした。途端に、体全体に強い衝撃。どうやら、転んだらしい。もうダメだ。路面に体を横たえたまま、その時を待つ。
「こっちだ！」
いきなり現れた誰かに担ぎあげられ、体がふわりと宙に浮く。走るから掴まれと言われたので、片手で彼の首元にしがみついた。
「…ここは、」
「俺の店だ。ケーキの香りが盛れださないように設計してあるから、安心しな」
打ちっぱなしのコンクリートがメインの、お店の中に連れてこられた。店の規模は小さくて、空のガラスのショーケースといくつかのテーブルと椅子が並ぶだけ。
「…なんで、ケーキって分かったの」
まさか、フォークかと身構える。
カタカタと体が震え出した。
「俺もケーキだからだ」
ここにフォークは居ない、と震えた体が包み込まれる。
「腕、食われたんだろ？手当てをしとこう」
僕を残して、彼は奥に消えた。
再び現れた彼は、救急箱と服を持っていた。ズボンはサイズが分からないから貸してあげられないが、この服は着てないからあげるといった。
自分の服を見る。捕らわれた時から同じ服。ボロボロで、いくらか引っ掛けて裂けている。ありがとうと、未だ震える手が服を受け取った。
「右腕は肩から食われたか。…次の回復期は？」
「…まだ。多分、次の満月くらい」
無い部分を包帯で巻かれながら、彼と話をする。
「君、行く所は？…まあ、追われていたぐらいだから無いか」
そうだ、と頷けば、じゃあここに居なよと彼は笑いかける。
「…いいの、」
「勿論。君、名前は？俺は、岩本照」
「…ラウール」
よろしくと差し出された手を握る。
大きくて暖かかったのを覚えている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 438人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハルタ | 作成日時：2022年5月20日 7時
