検索窓
今日:59 hit、昨日:158 hit、合計:63,203 hit

4+ ページ32

佐久間side

少し青い顔をして部屋に帰ってきた阿部ちゃんは、ドアを閉めるなり、ドアに背中をくっつけてずりずりと床にしゃがんだ。

俯く顔。荒くなる呼吸。

「あ、阿部ちゃん?」

構っていたスマホなど布団のどこかに飛ばして、阿部ちゃんのもとに向かえば、途切れ途切れの呼吸の中で何かを伝えようとする。

阿「…かる、が、」

「照が?」

阿「リ…グ、いる、」

「リビングにいるの?」

そう、と彼は頷いて、両目を閉じて呼吸を整えることにシフトしたようだ。


阿部ちゃんを半ば引きずって、ベッドにもたれかからせた。もう少しだけ一人で頑張っていてもらって、ドアを開けて斜め前、舘さん達の部屋をノックする。

なぁに?と出てきた舘さんに照のことをお願いして、再び部屋に戻れば、さっきより呼吸が荒くなっていた。

「もう、大丈夫。」

彼の対面にしゃがんで頭を抱えれば、力の抜けた体がくたんとこちらに寄りかかってきた。

何があったんだろう?

彼の右手に握られっぱなしのティッシュ。
少しだけ赤が滲む。

大方の理由はそれだけでわかった。

彼の右手からそれを抜き取って、ゴミ箱に投げる。白い塊は、大きく開いたゴミ箱の暗闇に消えていった。



…片付けに行ってくれたんだよな。

俺にはその光景を見せまいと、気がついたら居なくなっていた。舘さんも。

ふっかのことを頼む。と、それだけメッセージが入っていたっけ。

「…阿部ちゃん、俺生きてるからね。生きてる。」

じわりと濡れた右の肩。
頭を寄せてそう伝える。

「それと、ありがとうね、…片付け行ってくれて。」

…俺が、行けなくてごめん。

本心は小さく吐いた息と共に、部屋の中に溶かした。

この夜の星だけが、僕らの話を知っている *→←4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (98 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
379人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 病系
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ハルタ | 作成日時:2021年8月16日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。