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新盆、その後 * ページ22

阿部side

彼は、リビングのソファーの真ん中に座っている。3人掛け。右と左を佐久間と目黒に挟まれて、困った視線を向けてきた。嬉しさが混じった困った視線。

「みんな、僕のこと好きだねぇ。」

嬉しそうにぽつりと零す。

好きだったよ。
大好きだった。

送り盆。
今日、君は牛に乗ってゆっくりと帰る。


「みんな、ちゃんとご飯食べてね。」

玄関に見送りに来た、僕らに言った。

「ちゃんと寝てね。」

「ちゃんと…生きてね。来年また帰ってくるからね。」

うん、と誰かが返した。

彼は、最後に一回と、みんな1人ずつを抱きしめた。各々に耳元で何か言って、それにうんと頷く頭が揺れた。

「…じゃあね。」

ばたりと玄関が閉まるその瞬間まで、彼は笑顔で手を振っていた。

目黒は、あの海まで送ると一緒に出ていった。

玄関ドアの音がやけに大きく響いた。
誰も、何も話さなかったから。

「元気そうだったね。」
「うん。」
「笑ってた。」
「かわいい笑顔だったんだね。」

向こうで、楽しそうならよかった。

この世界が合わなかった。
それだけだ。

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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年8月16日 12時

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