鉢植え 3 (ページ17)

今日:15 hit、昨日:70 hit、合計:63,229 hit

2 ページ17

ただいまー、と何事も無かったのかのように彼は入っていく。恐る恐る彼の後ろをついていけば、彼の背中越しにふっかさんと照くんが框の上に立っているのが見えた。

こんな時間に帰ってきたんだ、怒られるかもしれない、と体が勝手に身構えて彼の背中の後ろから動けず、二人の顔は見れない。

深「おぉ、おかえり。」

照「ラウールも目黒も、おかえり。」

二人の声は優しくて、照くんの手が頭の上をぽふりと弾んだ。つうっと涙が頬を伝うのがわかった。ぽたりと玄関のコンクリートに落ちる。

深「あらあら。」

これ使いな、と、ふっかさんはタオルを持ってきてくれた。泣かないでと、ラウールの手が背中を摩ってくれる。

嬉しさと悲しみ。相反する二つの感情が胸の中を渦巻いて、ただただ涙を流させる。

涙が落ち着いた後、風呂に入ってきなと照くんに言われた。まだ足元でズボンは濡れていた。

ボディーソープの香り。火照った体。
頭から被ったバスタオルは、黒。

リビングに向かえば、3人はなにか話しているようで入れず、リビングの閉まったドアの前で様子を伺っていた。下がった視界、リビングから漏れる白い蛍光灯の光がフローリングの廊下を淡く照らしていた。

照「入っておいでよ、」

向こうから照くんが開けてくれて、そのまま手を引かれる。

ダイニングテーブルのラウの隣。
ラウが椅子を引いて俺を待っていた。

テーブルの上には先程の菊と、キュウリの馬が乗っている。

ラウ「これ、めめが作ってくれたの？」

「うん、作り方は佐久間くんに教わった。」

ラウ「だからか、すっごい速かったの。競走馬みたいだった。」

「最近、ハマってるって言ってた。その、…競走馬？ってやつ。」

振り落とされないように頑張った、大変だったんだよと、彼は笑う。