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寝室の少し大きなベッドの上。
木製の救急箱と、消毒液の匂い。
向かい合って座れば、さっきと同じように両手を優しく取られる。
佐「こんなに怪我するなんて、珍しいね。」
痛そう、あぁこれも痛そうと、手の甲と掌をコロコロとひっくり返して、傷を見るたびに彼の顔は歪む。
佐「消毒液するからね?染みるよ。」
「…うん。」
ぷしゅっと消毒液を掛けられれば、ピリッとじんわりと痛くて。
佐「ごめんね、痛いよね、すぐ終わらせるから。」
顔に出ていたのか、少し焦ったようにそう言った。
佐「仕事で、なんかあったの?」
彼が救急箱を片付けている間、ベットの上で自分の手を眺めていた。彼によって貼られた絆創膏の、少し斜めなところとか傷からずれてるところとか、不器用な部分が垣間見えて、それが愛しかった。
温もりが欲しかった。
先程と同じようにベットに座る、彼に手を伸ばす。そして、腕の中に引っ張りこんだ。
佐「わ、」
手荒な真似だとは思っている。でも今は、彼が生きてることも、自分が生きてることも確かめたかった。脳裏にはずっと、薄青の病院着のふっかがちらついている。
「今日、ふっかが来てくれたんだ。」
え、ふっかに会ったの?と胸元から曇った声がする。
「久しぶりに会った。全然変わってなかった。」
なのに何で、そんなに悲しそうなの。
胸元の声は、核心をついてくる。久しぶりに友人と再会したなら、それは喜ばしい嬉しい出来事ではないか、と。
「…病院着を着てたんだ。近くに、大きな大学病院があるじゃない。そこに…入院してるんだってさ。」
ひゅっと息を呑む音がした。くりくりの大きな目は、これでもかと言うくらい見開かれて、こちらを見ている。その顔を横目に、俺は彼の肩に頭を埋めた。
「…ねぇ、ふっか、治るよね?」
ぎゅっと抱きしめられる力が強くなるだけで、彼からの答えは返ってこなかった。
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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時