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阿部side

渡「涼太、涼太、」

佐「阿部ちゃん、阿部ちゃん、」

青い顔をした二人は互いの相方の名を呼んで、バタバタとリビングになだれ込んできた。舘さんはキッチンから、俺はソファーから二人の様子を眺めていた。



廊下に、ごほりごほりと重たい咳の音が響いていた。照は部屋にこもってドアを閉めているにもかかわらず、また、それは止まらないようだった。

様子を見てこよう。

少し前こんな話になって、佐久間と翔太が部屋に様子を見に行った。

渡「照、血が、」

佐「血が凄くて、」

二人の青い顔はどんどん青ざめて、言葉がうまく紡げないでいた。

渡「とにかく、来て!」

俺の手を引いた彼の手にも、血がついている。



中途半端に開かれたドアの先に広がる光景を、信じることが出来なかった。目の前に突きつけられて、事実だと言われているのに。

部屋の入口から動けなかった。
時が止まっているみたいだった。

周りは動いていて、でも、スローモーションのように見えた。誰かがタオルを持ってきた。すぐに血で染まった。救急車を呼ぶ電話をかけている声もした。誰の声が判断はできなかった。

ただ、広がる赤が、淡い色でまとめられたこの部屋に相応しくないなと、そんな場違いなことを考えていた。



なんで、

なんで、良くならないの
なんで、俺は何も出来ないの



なんで、照ばかり苦しまなきゃいけないの

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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時

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