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照「ふっかと、同じ病気だった。」
その言葉に、彼の方を向いたのは俺だけではなかった。リビングにいた全員が、彼の方に視線を向けていた。その視線に含まれていたのは、単に驚きの感情だけではなかった。
ふっかの最期を思い出した。
日に日に弱っていく姿が、脳裏にぼんやりと段々とはっきりとよみがえる。
この病気の行く末を、俺らは既に見せられている。
それは、彼も同じで。
なんなら一番間近で見ていた。
だから尚更、「ふっかと、同じ病気だった。」という彼の言葉を信じたくなかった。
「嘘…、」
無意識に言葉が口から落ちていた。
照「本当。」
書類を並べながらこちらに向けられた目に、光など差していなくて。
ダイニングテーブルに並べられた書類。
近くにいるのに、誰も手を伸ばせないでいた。
照「ふっかとひとつだけ違うところがある。」
書類に視線をやったまま、彼はそう言う。
佐「え?」
その言葉に、皆、不思議そうに彼を見上げる。
照「発見が早かったんだ。まだ、手は打てる。まぁ、急に悪くなる可能性もあるんだけど。それがこの病気の、たちの悪いところ。」
しばらくは通院で場合によっては入院だと言われた、と教えてくれる。
照「生きるよ。最後まで、抗うよ。…ふっかだって、そうだった。」
「…なんでも言って。サポートさせて欲しい。」
照「ありがとう。」
向けられた視線は、少しだけ柔らかくなっていた。
ここから、長くて短い彼と俺らの闘病生活が始まった。
体感的には長かった。
でも、数字を見れば短かった。
とてもとても、短かった。
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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時