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阿部side
深「阿部ちゃん、久しぶり。」
学生時代の友人に再会したのは、自分が営む花屋だった。
都会のビル群に隠れるような、曲がり角の小さな花屋。近くには大きな大学病院があるようで、そこの患者さんも見舞い客も来てくれることがある。
頼まれた花束に色と少し花の意味を混ぜて、お客さんに贈る。
元気になってね。
頑張って。
今までありがとう。
最後の意味の花束を作る時は、毎度胸が少し痛む。
今日もカラカラと入口のベルが鳴って、奥にいた俺は急いで店先に行けば、久しく会っていなかった古くからの友人が、おお、やっぱり合ってた、なんて嬉しそうに立っていた。
薄いブルーの病院着を纏って。
深「阿部ちゃん、久しぶり。さっきそれっぽい姿が見えたから寄ってみたら、あってたわ。元気にしてた?」
着てるもの以外、昔からの彼と変わらないのに、着ているものが昔と違う状況であることを知らせてくる。それがどこのものなのか、誰が着るものなのか、何人も同じ人を見てきたから分かっている。
彼の着ているそれは、近くの大学病院の入院患者さんが着ているものだ、ってことくらい、聞かなくても分かっている。
「ふっか…、元気にしてたよ。」
彼の着ている服は見ないことにした。
触れられたくないものだろうと思ったから。
深「花屋さんになったんだね。阿部ちゃんにぴったりだ。」
店の中をぐるりと見渡して、ふっかは笑ってそう言った。それからこの色が綺麗だの、これは初めて見ただの、小さくて可愛いだの、店内を歩き回っては一人楽しそうにはしゃいでいた。
病院着が邪魔だった。
それさえ無ければ、昔からの友人が自分がやっと構えた店を見に来てくれた。そんな日常の微笑ましいひとコマになっただろうに。
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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時