鉢植え 2 (ページ30)

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風邪をひいた。
最初はその程度に思っていた。

丁度季節の変わり目で、相変わらずの体はついていけなくて、それで体調を崩した。微熱と熱を行ったり来たり、だるい体と厄介なのは咳だった。

一回始まれば止まるのに時間がかかって、体の中から変な音もして。そのうちに胸や背中が痛くなって、遠くに血の味がした。

仲間は早く治るといいねと甲斐甲斐しく介抱をしてくれた。夜中に咳の音で起こして、食べられそうなものを作ってくれた。

不甲斐なさと同時に、なんで治らないんだろうと疑問を抱くようになる。

これは本当に風邪なのか？
だんだんと、怖くなってきた。

「病院」という場所に行けなくなった。

ふっかを思い出してしまうから。

彼がだんだんと弱る様を、それを見て何も出来ない自分を、彼の最期を、彼の全てを思い出してしまうから。

それは仲間も分かってくれていて、無理にでも病院に行けとは言わなかった。ただ、それも限界に近いようで、医療に頼らざるを得ない、そんな状態になっているのは確かだ。

今日も朝から熱が引かなくて、皆が仕事に行って空っぽになった家の中、リビングのソファーに沈む。壁時計の秒針の音と、時折咳き込む重たい音だけが、空に溶ける。

「ーったい、」

背中を丸めて、ソファーの上。

小さな弱音は、ソファーの布地が吸っていった。