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佐「あら?この前の、」

ラウ「お邪魔しています。」

同じラインの入ったカーディガンが揃う。彼は紺のカーディガンに白いラインだった。

目「ラウール、…探した。」

ラウ「ごめん、」

二人で話している隣で、佐久間は帰りにあったから連れてきたの。もしかしたら居るかもしれないって、と、俺と照に話した。

彼の苦しそうな、何かに耐えようとしている顔は、変わらなかった。

本心の部分は奥の奥、厳重に蓋をして鍵を掛けて、テープで巻いて。誰にも言わないし、言えなさそうだった。

まぁ、出会ってまだ浅い俺らに話せるわけはないだろうけれど、いつも一緒にいる彼も原因は分かっていないようだから、自分の中で頑張って飲み込んでいるんだろうな、と。ただ、限界も近いのかなと、彼を見て思う。



照「ねぇ、生きるのがしんどくなった?」

再び静かになっていたリビングに、照の小さくて重たい言葉が落ちた。その言葉を聞いた途端、彼の目から再び涙が落ちる。

まるで、正解だと言っているように。

照「ねぇ、この言葉が合っているかわかんないんだけどさ、『逃げていいから、生きて』。」

照のそれは、同じ気持ちを感じたことがある人だから言える、そんな言葉だった。

「限界を向かえるくらいなら逃げて良いし、わかんなくなったら泣いてもいい。ちゃんと見つけるから。彼と俺らが。ここに来てもいいから、ふっかと話せばいいから、だから、生きることは、やめないでほしい。」

顔覚えた!と、佐久間の腕が彼を包んだ。

「…せっかく仲良くなれたから、君がいなくなったら悲しいな。」

ね?と、彼の頭を撫でた。

目「ふっかさんには悪いですけど、まだラウールをそっちには行かせられないです。」

見守っててもらわないと、と、目黒くんは仏壇を眺めて言うのだった。



舘「うちの生徒泣かせてる、」

そんな舘さんの後ろで、あーあ、やったねぇ、とニヤニヤした翔太がリビングの入口からこちらを眺めている。

こ、これは違うんですと、佐久間がそれにのって、ラウールくんは大きな躯体を曲げて佐久間の背中に隠れていた。背中から覗くその顔は、少し晴れたようで。


良かった、と、小さく隣から照の声がした。
彼の表情も、同じように晴れていたのだった。

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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時

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