鉢植え 2 (ページ22)

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照side

阿「お待たせ、」

ベランダから帰ってきた阿部は、部屋の中に入るなり涼しいと、こぼした。

阿「とりあえず鉢の処置は終わったから、水だけ忘れなければ大丈夫だと思う。」

暑くなってきたしね、水を忘れちゃいけないのは照も同じだからねと、念を押される。テーブルについた彼と佐久間の前にグラスを置きながら、分かったよと、返す。

阿「で、本題だけど、」

近況報告の間にするりと入れられたその言葉を頭が理解するなり、鼓動がやけに煩く聞こえるようになった。

阿「ふっかがどうして鉢植えを買ったのか。」

鉢植えを買った理由。
あれが、「俺に」送られた意味。
込められた思い。

真剣な阿部の目に捕えられて、身動き一つも出来なくなる。

「…教えて欲しい。」

どっちかのグラスの中の氷が溶けて、カランと透明な音が響いた。

阿「…ふっかは、俺のところで鉢植えを買っていった。それを、次の日ぐらいにここに届けにきたの。」

「そう、ふっかからって。」

ある日阿部が、うちに来た。あの鉢を持ってエントランスにいて。それを仕事終わりたまたま鉢合わせて、部屋まで上がってもらったんだ。

阿「本当は自分で置きに行けたらよかったんだけど、難しかったんだよね、体調的に。それで、配達を頼まれて。」

阿「鉢を買った日、ふっかに聞いたんだ。なんで買ったの？って。照に贈るなら花束でも良くない？って思って。今までも何回か花束は買ってくれていたからさ、」

そうしたらさ、と言葉を続けていく。

《育てるのが難しい鉢植えを選んだのは、毎日世話をしなきゃいけないから。まあ、照はちゃんと世話してくれると思うけれどさ。

通りに面したところに置けば、そこを通る皆の目に付くだろ。

その花に元気がなかったり、枯れそうだったりしたら、家に行って照の様子を見てくれないか。きっとなんかあった証拠だろうからさ。

本当は俺が見れたら良いんだけど、そうもいかなそうだから、

だからさ、頼んだよ。照のこと。》

阿部が話してくれた鉢植えに込められた意味。

話しているのは阿部なのに、途中からふっかの声と姿が重なった。

店でふっかに買った意味を問えば、こう答えて更に理由を知りたいと言われたら、阿部から伝えて欲しいと頼まれたらしい。

阿「本当に重役で、何度も逃げたかったけど、二人でした約束って、これが最後だったんだ。」

と、苦い顔で零すのだった。