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佐久間side
照が家に来た後日、改めて二人でふっかの元に行った。緊張しながらカーテンを引けば、照は元より何故か翔太たちもいて、ふっかのベッド周りはとても賑やかだった。
結婚しますと、阿部ちゃんの声は震えていた。
二人で指輪をはめた手をみんなに見せる。
驚きのどよめきと、おめでとうの声と、ベッド上のふっかは泣いていた。
舘さんたちの時も泣いたんだと、照はふっかの背中をさする。だって、嬉しくて、と涙声のふっかはそう言った。
後日、一人でふっかの元に向かう。阿部ちゃんが手を離せないから、代わりに様子を見に行ってくれないかと、頼まれた。
いつものようにふっかのスペースに行けば、ベッドごと消えていた。
「え?」
変な汗が背中を伝う。しばらく立ち止まって、とりあえずとナースステーションに駆け込むことにした。
「すみませーん、」
はい、どうされました?と、近くにいた看護師さんが対応してくれた。
友人の見舞いに言ったらベッドごと無かったと話すと、深澤さんですか?いま、少し危なくて部屋を移ってもらっていますと、教えてくれた。貴方がお見舞いに来たことを、深澤さんに伝えますよと、言ってくれたので、名字を名乗る。
「…佐久間、君が、佐久間くん?」
佐久間というワードに、少し離れたところで看護師さんと話していた、白衣の人が振り向いた。白衣を着ているからきっと先生だろう。
「あ、佐久間です、」
「あ、深澤さんの担当医で、あの、少しお時間あります?」
「大丈夫です。」
ナースステーションから抜けてきて、先生について行けば、廊下の端に設置されたフリースペースに来た。
「深澤さんのお話しでよく佐久間くんが出てくるものですから、どんな人か気になっていました。今度ご結婚されるようで、おめでとうございます。」
と、頭を下げた。釣られてありがとうございますと、返しつつ、心の中でふっかどんな話してるんだ?と、今度聞いてみることにする。
「これは深澤さんにも話をして、近しい方にも伝えてくださいと。そうしたら、伝えるなら貴方がいいと仰られたので言いますが、」
と、そんな前置きから入ったので、何となく察しはついた。
「深澤さん、…もう長くないです。覚悟とご準備の方をお願いします。」
止まった世界とちゃんと突きつけられた現実。
これを、阿部ちゃんにと言わなかったふっかを、褒めたい。
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作者名:ハルタ | 作成日時:2021年7月2日 13時