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10命大事 ページ10

移動中、隣を歩くAは「ねぇ。」と口を開く。



コイツは何時も話をしていないと気が済まない性分なのか?



「使い捨ての駒のような部下にも気をかける理由、聞いても?」



その言葉に苛立ちを覚えるが、其れを悟られないように平静を努めて答える。


「…俺は、誰一人使い捨ての駒だとは思っちゃいねェ。部下であり、仲間だ。」


「ふぅん。部下は兎も角、仲間だなんて優しい人。」


優しい、と云うのとは何か違う。

そう思い、つい言葉をまた返す。


「優しかねェよ。もし、組織に害を成すなら直ぐに始末する。」


俺の答えを聞き、

「警戒してるのか信頼してるのか、よく解らないわ、組織と云うものは。」


実に面倒ね。と溜め息を吐きながら云う。


まだ納得していない様だが、Aを納得させる答えを知る訳も無い。


だから、

最後に「後一つ、此れも俺の持論だが」と付け加えて云う。


「部下が大勢死ぬのは、ソイツらの上司の指示が良く無いからだ。」



漸く、「成程。」とだけ云って黙ってくれた。



目的の部屋に着く直前。


「おい、A。」

と、今度は俺から声を掛ける。


「なに。」と返し、此方を見つめる彼女に、



「今まで手前は一人で好きなように動いてたンだろうが、組織に下るなら仲間を考えて動け。捨てて良い命なんて無ェからな。勿論Aの命も、だ。」


と言葉を投げた。



「…何て悪に似合わない言葉。」



ぽろりと呟いた彼女の声と表情には珍しく、明らかに驚きの感情が含まれていた。

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作者名:雪渓 | 作成日時:2018年9月16日 19時

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