29退屈 ページ29
ワタシは退屈な日々を過ごしていた。
殺した幹部の葬儀が終わるまでは処分しないらしい。
逃げようと思えば逃げれるがしなかった。
理由は簡単。
意味が無いから。
「…彼の人の近く以外はきっと意味が無い。」
この言葉は誰に聞かれる事もなく消えていく。
初めて、此処なら何か得られるかもしれないと思ったけれど。
気になる物程、そう簡単には手に入らない。
稀に彼は此処に来る。
色々訊かれるが適当にはぐらかす。
例えば。
「知ってる事を吐け。」
「知ってる事は…貴方の身長が平均より低い事くらいかしら。」
「あ"あ"あ"?今すぐ死にてェのか?つうか、手前の方が俺より低いだろうが!!」
「ワタシは女のコだからいいの。兎に角、貴方の事は何も知らない。この間が初対面。」
こんな風に。
全ては貴方の為。
此処に繋がれた初日、首領は独りで来た。
「何故、中也君の記憶を消したのだね。」
と真っ先に訊かれた。
「何かしら制裁が加わる可能性が有ったから。此れはワタシの単独犯なのに、巻き込んだら可哀想。」
淡々と答える。
「成程ねぇ。」
そう云う首領の表情は、何を考えているか読み取れない。
「…最初から此れが狙いだった癖に。」
嘲け笑い乍、そう云ってやった。
しかし、何の事だね、と静かに笑い流された。
そして首領は部屋の出口に足を向ける。
「君の処遇が決まる日まで余生を楽しみ給え。」
そうだ、中也君の為にも本当の事を云ってはいけないよ。
そう云い残し首領は帰った。
云う訳無いじゃない。
口に出せば全てが泡となる。
嗚呼、退屈だ。
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作者名:雪渓 | 作成日時:2018年9月16日 19時