21嵐の前の静けさ ページ21
ここ一ヶ月、やけにAが物静かだ。
同行させた任務も粛々とこなすし、勿論書類仕事も真面目にしていた。
諜報の腕を見てもらう為、ニ週間ほど諜報部隊にAを貸した。
が、其処でも真面目にしていたと聞き、肌寒いものを感じた。
奇妙過ぎて、パソコンで報告書を打っているAにとうとう訊ねる。
「…おいA、先月の異能空間で何か有ったか?」
俺の言葉を聞いた瞬間、タイピングの手を止める。
「…其れは、幹部候補自らワタシにサボりの許可を下さるって事で?」
笑顔だが、目が全く笑って無い。
此れは怒っていると直ぐ様気が付く。
「いや、そうじゃねェけどよ。なンか可笑しくねェか。」
そう云うと「はぁ。」と溜め息を一つ溢したA。
「唯、組織に馴染む努力をワタシなりにしているだけなのだけど…可笑しい、かぁ。」
よし。やーめた!!
そう云うやいなや、立ち上がる。
いきなり立ち上がった事に驚き、つい俺は「うおっ!」と声を出す。
「こんなに長く真面目に働いたので、二日くらいサボりまーす。」
では、と云ってそそくさとドアの向こうに消えた。
呆然とドアを見つめる。
「…って、おい!!A!!!待ちやがれ!」
慌てて追い掛けたが、勿論其処辺りに居る訳もなく。
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作者名:雪渓 | 作成日時:2018年9月16日 19時