19みっともなく ページ19
外に待機させていた部下を呼び、伸びている二人を連行させた。
廃屋から出ようとした際、Aが立ち止まった。
｢ん？どうした。怪我でもしてたか？｣と声を掛けながら俺も立ち止まる。
そして、俺にこう云った。
｢中也さん、何故助けたの。ワタシを助けずとも任務はこなせたのに。｣
｢そりゃ、仲間だからだ。｣
直ぐにそう返す。
すると、Aも直ぐに言葉を返した。
｢ワタシが生きたい、何て思ってないと云ったら？｣
その言葉を聞いた瞬間、彼女の肩を掴んで睨む。
｢何云ってやがンだ手前ェ。｣
｢生きることも死ぬことも大差無いとは思わない？｣
彼女の瞳は何も映さない。
だが、その空虚な瞳を真っ直ぐ見据える。
｢死ぬくらいなら生きてる方が百倍マシだ。｣
｢如何してそう云い切れるの？｣
そう聞く彼女は、何も知らない純粋無垢な幼子のようだった。
その表情を見て、Aはなにも知らないだけなのでは、と思った。
誰かが教えないと、知らないことは沢山ある。
教えてくれる人が彼女には居たのだろうか。
答えは解らない。
もし、居なかったのなら。
考えを廻らせた後、こう云った。
｢…俺がそう思うからだ。｣
｢はぁ？なにそれ。阿呆なの。｣
呆れ顔でそう云われる。
｢勝手に云ってろ。だが、一つ解るのは死にたいと思ってる奴ほど簡単に死ねねェ。｣
何故なら、そういう奴等に限って何かを見い出だしたいと人一倍願っているから。
しかし、其れは云わないでおいた。
その代わり、｢みっともなく足掻いて、考えて、自分で答えを見つけやがれ。」と言葉を投げる。
そして彼女の肩から手を離して身を翻し、歩き出す。
Aは何か呟いて、俺の後ろをついてきた。
それはよく聞こえなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪渓 | 作成日時：2018年9月16日 19時
