14忍び寄る脅威 ページ14
月が闇を照らす夜。
任務は呆気なく終わった。
「中也さんの異能もワタシの異能も使うまでもない雑魚。眠気覚ましにも成らない。」
屍を見下ろし乍、そう吐き捨てる彼女。
恐れて逃げ出す輩だ。弱いのは分かっていたが。
「しッかしなァ、何か腑に落ちねェ。」
死体を避けながらAの元へ向かった。
こんなにも残党は弱い。
にも拘らず、彼らは強気だった。
死ぬ間際まで。
俺の心を見透かすように「考えられるのは一つだけ。」とAは云い出す。
其れが奴をふと連想し、少し苛立つ。
「…なんだ、言え。」
ついぶっきらぼうに聞いてしまった。
「その前に、一つ聞きたいことがあるの。最近ヨコハマの港で不審な船舶情報とかは無い?」
少し考える。
そして数日前に有ったことを思い出し、伝えた。
「其れだわ。…きっと海外組織はもうこの街にいる。海外にも異能者は沢山いるのでしょう?」
その言葉にはっとする。
確かにそう考えると辻褄が合う。
不審な船舶は、何もせずに暫く海上で停泊してから遠くに消えたとの報告だった。
例えば、海外組織の中に瞬間移動の異能者が居れば、船から港へ飛べるかもしれない。
若しくは幻覚の異能だとしても、そこに虚像を造りだし、入り込むことが出来る。
「て事は、既に此処に居るってことかよ。」
「そう云うこと。」
俺とAは背中合わせに立つ。
そして聴覚を磨ぎ澄ます。
ふと、カチャリと引き金を引く音がした。
「そこかァ!」「みつけた。」
そう声を出すと同時に、俺もAも音の方に素早く体を向けてナイフを投げる。
そして、相手の銃弾を避けるため前に転がり乍、体勢を立て直して銃弾が飛んできた方向を睨んだ。
「これはこれは、息がピッタリですね。ポートマフィアの若者さん。」
「空間の向こうに居なければ大怪我だ、恐ろしい。」
誰もいなかった筈の空間がいきなり裂けて、細目の男と体格の良い男の二人組が現れた。
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作者名:雪渓 | 作成日時:2018年9月16日 19時