47.[本当の願望] ページ47
李刑事は一つの部屋で事情聴取をする。
金「ほんとに何も覚えてないんです。部屋でルームサービス取って結局食べもせずそのまま寝ちまって…」
李「周龍道くん！彼の話は本当かね？」
周「ハイ！」
李「時刻は？」
周「ええと…たしか午前2時半頃でシタ…」
李「ありがとう。もう結構です」
――
李「金田一君、もう一度聞きマス。我々が午前5時頃、旧館5階の奥の部屋に呼び出された時、君はどこにいましタカ？」
金「だから自分の部屋で寝てたはずなのに、気づくとあの改装中の旧館の部屋にいて…」
李「手に持っていたナイフは？」
金「目が覚めたら握ってました」
李「部屋には君しかいなかったというんですネ？」
金「ええ、何だかボーッとしててよく覚えてないんだけど、そのままナイフを持ってふらふらと外に…」
李「…フー、困ったナ…あの部屋にたしか君と明智警視がいたのを、私も、もうひとりの刑事も目撃してイル…そこにいるAサンもネ…！」
『……』
金「でも本当にいなかったんだ！ホントに…」
李「もし君が嘘をついていないとすれば…君は何らかの原因で異常な精神状態に陥り、無意識のうちに藤井文香や明智警視を襲ったのかもしれナイ」
金「え？」
李「君は昨夜のマジックショーで催眠術をかけられたネ？」
金「でも、あれはインチキで…！」
李「覚えてるね？マジシャンの助手をしていた香胡蝶(ﾌｫﾝ ﾌｰ ﾃｨｰ)さんだ」
香「私、ホテルに雇われた助手であのマスクマンという奇術師のことよく知らないデス。事前の打ち合わせデハお客サマの催眠術、初めから「失敗」する予定デシタ…そこで油断したお客サマを別のマジックでもっと驚かす筋書きデ…」
李「マスクマンも同じ答えだったが、こんなことも言っていタ…
私のかけた催眠術はマジックの演出のひとつにすぎませんが、ごく、まれに本当に暗示にかかってしまう客もいるのは確かです。もし彼がそうだとしたら私がショーの演出のつもりで口にした言葉通り、心の底に沈む「本当の願望」を自ら引き出してしまったのかもしれませんね…
と」
金「本当の…願望！？」
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作者名：おばあちゃん | 作成日時：2018年1月28日 8時
