58 JN ページ11
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jin side
「‥‥嘘だよ。セラに酷いことなんて言わないよ」
少しホッとした様子のセラに頬に添えていた手をゆっくり下に下ろしそのまま手を握る。
「でも僕の前だったら泣いてほしい。仕事とか曲とか歌詞とか全部忘れてさ。‥‥今日みたいに辛いことあったら話してほしい。どんな些細な事でもセラのことだったらなんでも知りたいよ。嫌いになんて絶対ならないから」
縋るような目の君にどうしようもなく愛おしくなって抱き寄せる。肩に額を置く君は静かにありがとうと言った。おずおずと背中にまわる手に僕は更に腕の力を強めた。
奥に見えるハンガーラックにかかった僕のバッグには相変わらず君とお揃いのキーホルダーがついてある。あの日の出会いが無かったらこんなにも人を愛おしいと感じていただろうか。酒に酔った頭なのに嫌でも分かる。僕はセラが好きなんだな。それも、どうしようもなく愛している。前から薄々気づいてはいたけどもう逃れようのない事実。
君の言う好きと僕の言う好きが同じだったらいいのに。今の弱気な君にこのまま想いを告げられたらどれほど楽だろうか。
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作者名:遊 | 作成日時:2022年10月19日 21時