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「(…目覚めとしては最悪ですね…。)」
嫌な夢だった。今も昔も、ずっと過去に囚われ続けている。
「石燕。起きたのかい?」
「あっ、与謝野先生おはようございます。」
石燕に声を掛けた与謝野は、片手に鉈を持っていた。それを見て、嫌な予感がした。
「実はねェ、谷崎の第二回目の解体に入るところだよ。」
「あっ、成程〜。第一回が終わって休憩だったんですね〜。」
あえて、解体と言う言葉を無視する石燕。
「石燕。
不眠症とはいえ、ちゃんと寝るんだよ。後、場所も考えな。」
顔色悪いじゃァないか。と言う与謝野。
そう。石燕が寝ている場所は、応接室のソファーだった。
「じゃあ、谷崎が待っているから行ってくるな。」
「いってらっしゃいませ。」
これからの事を考えて谷崎に両手を合わせる石燕。
「ん?国木田さん、何運んでいるんですか?」
石燕が伸びをしていたら、大量の書類を持って運んでいる国木田の姿があった。
「!石燕、起きたのか。
小僧の所為で大わらわだ。」
「成程。だから、大切な書類を運んでいるんですね。
大変でしょう…。手伝いますよ。」
「いいのか?助かる。」
太宰の野郎に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。と、顔を歪めながら言う国木田。
「治君は、治君ですからね〜。だからこそいいんですよ〜。」
「石燕。お前が甘やかすから、ああなるんだぞ!」
分かっているのか?と、聞く国木田。
「あら、敦君こんな処に居たんですね。」
「!小僧、お前の所為で大わらわだ。手を貸せこいつを_____」
スッと、国木田と石燕を通り過ぎる敦。
「おい?」
そんな敦を不思議に思って呼び止める国木田。
「……心配いりません。
これでもう、探偵社は安全です。」
「…はぁ?」
「(ああ、そう言う事ですか。)」
敦の言ったことに理解が出来ない国木田。敦の意図を汲み取った石燕。
「(彼は、優しいですからね…。)」
そう思っていれば、敦は走り出してしまったようだった。
「何だったんだ。彼奴。」
分かるか?石燕。と、聞く国木田。
「さぁ。
まぁ、お腹が空いたら戻って来ますよ。」
「そうか。」
さぁ、急がなければ!と、息巻く国木田の様子を、微笑んで見ている石燕。
_____大丈夫。彼は、戻って来る。
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作者名:楓 | 作成日時:2021年2月28日 20時