奇跡 ページ49
杯に一杯の聖水を張り、何故かそこに大量の水晶の原石を入れる。
「…何してるんですか?」
「黙っといてくれ!あんたはハクを呼びな」
そして右手を一振りすると、お婆様の手の中には、魅惑的な輝きを放つ鉱石のような物が。
水色の混じったエメラルドといえばいいのだろうか。
幻想的な雰囲気を纏ったその石を、お婆様は大切そうに手に包み込む。
「…お呼びでしょうか」
お決まり台詞で史織を連れて登場したハクは、どうみても変な儀式をしているお婆様を一瞥。
そして、そばで突っ立って見ていた私のほうに目をやった。多分何をしているのかと聞きたいのだろうが、私にもさっぱり分からないので、怪訝な顔で首を振るしか出来なかった。
と、なんとベストタイミングで銭婆様が天窓からハゲタカの姿で飛び込んでくる。
「千夏は、あちらの世界でお前との繋がりを持ったんだよ!ハク龍!」
お婆様と同じく激しく興奮している様子だ。
変な儀式の最中のお婆様には目もくれず、ハクと千夏の方へ走り寄った。
「繋がりを…?」
「分からないのかい!!あんたの川はまだ生きているんだよ!!琥珀川が!」
ハクの瞳に驚きと戸惑いの色が広がる。
「琥珀川…って…昔マンションが建って埋められちゃったけれど、少し前に公園の近くに同じ名の小川が流れるようになったんだよ」
千夏がそう言ってハクを見上げた。
彼は、信じられないというように暫く固まっていたようだが、やがて我に帰ると、史織の手を引いて部屋から出て行きかける。
「急がなければっ…!道は4時間の間しか繋がらない!!」
「待ちな!ハク!これを千夏の首に掛けてやるんだよ!」
と、お婆様がハクに駆け寄って先程の石に銀の鎖を通したペンダントのようなものを手渡した。
「史織!あちらの世界に着くまでは決して振り向くんじゃないよ!そしたらハクが消えるからね!」
「湯婆婆様…」
「4時間だけだ。道は千夏の居る琥珀川に繋がっているんだよ」
ハクは、お婆様に深くお辞儀をすると、私を見る。
「いいの。…二人で行って」
そう言うと、彼は軽く頷くと千夏の手を優しく握って天界の部屋を飛び出した。
…一気に色んなことがありすぎて。
だけど私は涙が出るほど嬉しかった。
…琥珀川が再びあちらの世界で息を吹き返したのだ。
彼があれほど愛した川が。
…これから全てが動き出すかもしれない。
パンドラの箱を開けたように。
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やっさん(プロフ) - なるほど。結婚してから、王位を継ぐの理由のひとつに、一人では、王の仕事が多すぎて、手に負えない事情も、あったのですね。二人で協力して、やっとなんとかなる激務、王様も楽ではない汗汗。 (2020年6月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - ゆきさん» ちょっとし、思いっきりですが、リクエストよいでしょうか?龍神屋敷の、設定で、千尋が、家臣の扱い方が、わからないために起こした、お笑い騒動を書いてみてはどうでしょうか。どんな、騒動が、あったか興味があります。 (2020年6月8日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハク様が、龍神お化け屋敷に、帰るのですね。ルイと沙羅姫様の問題にも決着をつけるべきですし、まだまだ、前途多難の波瀾万丈ですね汗汗。余談、千尋さん、女官の方々をうまくつかえるのか??千尋が、屋敷に珍騒動を巻き起こすか(^^;;。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハクの子供が、危ない汗。確かに、千尋とハクの子供には呪いが... 。呪いをとかないまま子供を作るのは、無謀なのか!?!? (2020年5月23日 22時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - 早う、暖かくして上げて!!! (2020年5月22日 17時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yuki | 作成日時:2020年2月10日 1時