苛立ち ページ43
それから約一か月の間、異様に彼と言い争うことが増えた。
その理由はもう様々で。
ほんの小さなことから、もちろん千夏やマヤ、蛇神のことまで。多分ハクの体調と感情の起伏が激しくなり、今まで彼がぐっと堪えてきたものが全て崩壊したためだろう。
とうとう別々で寝始めたので、夜のあれこれも一切無く。そのせいで、というか絶対に欲求不満のせいで、ハクの苛々はピークに達してきていた。
「何故?私はこの半分の公務は任せたが、あとの半分にも手を出せとは言っていない」
「…また今日も苛々してるの?やめてよ」
「苛ついているのはそなたの方でないか?黙っていればいいものを、一言多いのだよ」
「…なに。私が悪いの?てか何仕事取られたくらいでキレてるの?」
「…キレてない。意見を述べているだけだ」
「キレてるって言うんだよ?それ」
今日の喧嘩の種は、公務を私が二つくらいおおく代わったことについて。
真夜中の2時に彼の部屋でのこと。
「…そなたは私をむかつかせる天才か?」
「どっちの意味?」
わざとらしくベッドに座って、首を傾げて見せる。
誘惑…と言われたらまあそうだけど。
ハクは、そんな私を見て涼しい顔は崩さない。
「…両方の意味だよ」
え。随分と正直で。
それどころかハクは私の誘惑に乗るらしく、こちらまで歩いてくると私を見下ろす。
「…したいの?」
そう囁いてみる。彼の瞳が揺れた。
「…はいと言えばそなたはどうするの?」
「…押し倒せば?」
括っていた髪を解くと、ハクはスイッチが入ったように私をベッドに押し倒した。
一か月分溜まったのを解消するかのように始まる愛撫が、正直気持ち良くて彼の背にまわして抱きしめた。
「先に言っておく。手加減しない」
「…っ…ぁ…」
「私を怒らせた罰だ。…寝れると思うなよ」
「…はぁっ…、…」
「っ…」
この人、かなり上手いのだ。気持ちよくさせるのを死ぬほど慣れている。
展開が早すぎると我ながら思うが、この罰なら大歓迎だと思った。
**
事が済むと、私達はぷっつりと意識が途切れた様に眠ってしまった。
整った美しい顔に、そっと口付けると彼はほんの少し身動ぎして私をその腕に抱き締めた。
「…明日…一緒に行こうか」
「…どっちに?」
「先に湯屋だ。マヤの方は慎重にやらないと」
「…そう…だね」
「千尋」
「うん?」
「…ごめん」
ずるい
寝転んだまま謝るのは反則だ。
情緒不安定になる気持ちはよく分かるからこれ以上は責めないけれど。
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やっさん(プロフ) - なるほど。結婚してから、王位を継ぐの理由のひとつに、一人では、王の仕事が多すぎて、手に負えない事情も、あったのですね。二人で協力して、やっとなんとかなる激務、王様も楽ではない汗汗。 (2020年6月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - ゆきさん» ちょっとし、思いっきりですが、リクエストよいでしょうか?龍神屋敷の、設定で、千尋が、家臣の扱い方が、わからないために起こした、お笑い騒動を書いてみてはどうでしょうか。どんな、騒動が、あったか興味があります。 (2020年6月8日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハク様が、龍神お化け屋敷に、帰るのですね。ルイと沙羅姫様の問題にも決着をつけるべきですし、まだまだ、前途多難の波瀾万丈ですね汗汗。余談、千尋さん、女官の方々をうまくつかえるのか??千尋が、屋敷に珍騒動を巻き起こすか(^^;;。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハクの子供が、危ない汗。確かに、千尋とハクの子供には呪いが... 。呪いをとかないまま子供を作るのは、無謀なのか!?!? (2020年5月23日 22時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - 早う、暖かくして上げて!!! (2020年5月22日 17時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yuki | 作成日時:2020年2月10日 1時