千と千尋の神隠しより「千尋とハクは許婚！？」part11

昔の真実 ページ32

建前としては、正装する必要があるので女官達に頼んで髪型と化粧、着付けをしてもらった。
…今ではほんの少し慣れたものの、最初はそれはもう挙動不審になってしまい、髪型の希望を聞かれた際に頭がどうかしていて中世の姫っぽく…なんて言った結果。
マリーアントワネットのそっくりさんデビューしてしまったことがある。
完璧黒歴史だが。

「…接待と同じ色の着物で大丈夫です。夜はもちろんイブニングドレスに着替えますけど…お茶会も色を変えます」

「かしこまりました。では昼間は群青色のお着物を…」

淡い群青の着物に腕を通す。
…今日も長い1日になりそうだ。
…笑顔でお淑やかで…愛想良く綺麗に…

見た目は、完璧な姫に見える状態で、部屋を出ると通りかかった召使い達が深々と頭を下げた。
まあ半分ハクの物真似だが、気にも留めず涼しい顔で廊下を横切る。
…嫁いだ初日はあんまり深く頭を下げられて動揺して同じくらいお辞儀をし返したら、もっっと頭を下げられて最終的には床にひれ伏されたっけ。
あれにはまいったな…
あとはあれだ。
湯屋のくせで、こんなに廊下が広いのに端に寄って歩いたため、召使いみんなが石壁にしがみつきそうになりながら後を着いてきたことも。
王族は、基本真ん中を通るものなので。
そういう決まり？王族の常識を知らなすぎてハクが本気で頭を抱えたのを見て爆笑していた私だが。
そんな初々しい悩みも消え去り。

「…席を外していただけますか」

広間にて険しい顔で座っている二人の夫婦を見、私は召使い達にそう呼び掛けた。
広間に三人だけになると、私はそっと腰掛けると顔を上げた。

「…なんの御用でしょうか」

「…今回のことに関して謝罪はしたいと思います。ただ、夫の貴方がどういう関係なのかはっきりしなければ、その気にもなりませんわ。一体、何があったのですか？数年前に」

ルイの妻はそう私に言った。
…ルイは、自身の妻にまだ何も話していないようだ。
それが分かって、若干圧をかけるつもりでルイに目をやったが、彼は憂いを帯びた瞳でこちらを見つめるだけ。

仕方なく、吐息をつくと、私は数年前に想いを馳せて切れ切れに言葉を紡ぎ始めた。

「……16の時、私は許嫁だった皇子を他国の姫に横取りされ、半ば投げやりで魔法学校に入学しました。
そこで一学年上の先輩だったのが、ルイ。貴方の夫です。小説が好きだという点で意気投合した私達は徐々に心が近づいていって、ある時ルイは私に…」

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