選択 ページ25
すまない千尋…
わたしには…そなたを捨てて子を育てていく勇気など、無い。
ましてや、そなたを失ってまで子は望まない。
王位を奪われたとしても。
「…千尋を…銭婆様…千尋を助けてください…」
私は、その場に崩れ落ち、懇願した。
廃れたものだ。わたしにはこのような魔法は使えない。いや、使いたくない。
「…いいのだね。」
「子は諦めます…銭婆様!!どうか…私の子を…私達の子を殺めてください…それで彼女が救えるのなら…」
すると、銭婆様はゆっくりと頷くと、湯婆婆様の方に目をやる。彼女は、神聖な水瓶を抱えていた。
そこに聖水を流し込み、なにやら二人で呪文を唱え始める。
私には、千尋の手を握りしめることしか出来なかった。目覚めた後の彼女の第一声を想像した私は、心が壊れそうだった。ああ。なんと言えば。私は彼女になんと説明すればいいのだ。
ふと、湯婆婆様は私に聖水の入った杯を差し出した。
……私にやれと。
拒否権は無かった。
私は、彼女の頭を自身の膝に乗せると、その口に聖水を流し込んだ。
…子を殺めることになる毒薬を。
やがて、千尋の呼吸が規則正しく滑らかなものになる。
…ああ。私はまたもや、自身の子を…
罪悪感に押しつぶされそうだった。
「…三時間もすれば目覚めるよ」
銭婆様はそう一言。
その間にやるべきことは、いくつかあった。が、真っ先にするべきこと。
[子は駄目だった。千尋と引き換えに諦めた。]
別にルイを責めるつもりはなかった。
ただ、事実だけはと。
その場で羊用紙と万年筆を借りてそうしるした。
すっ…と手で風を切って窓を開ける。
暫く目を瞑ると、先程の梟が姿を表した。
「頼む。すぐに届けてくれ」
そう囁くと、梟は手紙を咥えてすぐに飛び立つ。
…多分、風の速さで彼は飛んでくるだろう。
ルイのもう一つの化姿は確か、鷹。
…あいつも、千尋への愛情は隠すに隠し切れていないようだ
**
ハッ……
急に意識が戻った気がして、思わず飛び起きる。
…が、その異様な空気に不快感を覚えた。
なんだろう。この雰囲気。
部屋には誰もいない。しかも何故か天界にいて、暖炉がそばでパチパチと音をたてている。
ふと、奥の部屋が開いた音がして振り向くと、お婆様が銭婆様と出てきたところだった。
「あ…銭婆様…」
しかし、彼女たちは何も言わなかった。
ただ、憂いを帯びた目で私を見つめるだけ。
「何か…あったんですか」
…沈黙。
「…ハクになにかあったんですか?」
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やっさん(プロフ) - なるほど。結婚してから、王位を継ぐの理由のひとつに、一人では、王の仕事が多すぎて、手に負えない事情も、あったのですね。二人で協力して、やっとなんとかなる激務、王様も楽ではない汗汗。 (2020年6月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - ゆきさん» ちょっとし、思いっきりですが、リクエストよいでしょうか?龍神屋敷の、設定で、千尋が、家臣の扱い方が、わからないために起こした、お笑い騒動を書いてみてはどうでしょうか。どんな、騒動が、あったか興味があります。 (2020年6月8日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハク様が、龍神お化け屋敷に、帰るのですね。ルイと沙羅姫様の問題にも決着をつけるべきですし、まだまだ、前途多難の波瀾万丈ですね汗汗。余談、千尋さん、女官の方々をうまくつかえるのか??千尋が、屋敷に珍騒動を巻き起こすか(^^;;。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハクの子供が、危ない汗。確かに、千尋とハクの子供には呪いが... 。呪いをとかないまま子供を作るのは、無謀なのか!?!? (2020年5月23日 22時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - 早う、暖かくして上げて!!! (2020年5月22日 17時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yuki | 作成日時:2020年2月10日 1時