検索窓
今日:20 hit、昨日:1 hit、合計:29,958 hit

選択 ページ25

すまない千尋…
わたしには…そなたを捨てて子を育てていく勇気など、無い。
ましてや、そなたを失ってまで子は望まない。
王位を奪われたとしても。

「…千尋を…銭婆様…千尋を助けてください…」

私は、その場に崩れ落ち、懇願した。
廃れたものだ。わたしにはこのような魔法は使えない。いや、使いたくない。

「…いいのだね。」

「子は諦めます…銭婆様!!どうか…私の子を…私達の子を殺めてください…それで彼女が救えるのなら…」

すると、銭婆様はゆっくりと頷くと、湯婆婆様の方に目をやる。彼女は、神聖な水瓶を抱えていた。
そこに聖水を流し込み、なにやら二人で呪文を唱え始める。

私には、千尋の手を握りしめることしか出来なかった。目覚めた後の彼女の第一声を想像した私は、心が壊れそうだった。ああ。なんと言えば。私は彼女になんと説明すればいいのだ。

ふと、湯婆婆様は私に聖水の入った杯を差し出した。
……私にやれと。
拒否権は無かった。
私は、彼女の頭を自身の膝に乗せると、その口に聖水を流し込んだ。
…子を殺めることになる毒薬を。
やがて、千尋の呼吸が規則正しく滑らかなものになる。
…ああ。私はまたもや、自身の子を…
罪悪感に押しつぶされそうだった。

「…三時間もすれば目覚めるよ」

銭婆様はそう一言。

その間にやるべきことは、いくつかあった。が、真っ先にするべきこと。

[子は駄目だった。千尋と引き換えに諦めた。]

別にルイを責めるつもりはなかった。
ただ、事実だけはと。
その場で羊用紙と万年筆を借りてそうしるした。

すっ…と手で風を切って窓を開ける。
暫く目を瞑ると、先程の梟が姿を表した。

「頼む。すぐに届けてくれ」

そう囁くと、梟は手紙を咥えてすぐに飛び立つ。

…多分、風の速さで彼は飛んでくるだろう。
ルイのもう一つの化姿は確か、鷹。
…あいつも、千尋への愛情は隠すに隠し切れていないようだ

**

ハッ……

急に意識が戻った気がして、思わず飛び起きる。
…が、その異様な空気に不快感を覚えた。
なんだろう。この雰囲気。
部屋には誰もいない。しかも何故か天界にいて、暖炉がそばでパチパチと音をたてている。
ふと、奥の部屋が開いた音がして振り向くと、お婆様が銭婆様と出てきたところだった。

「あ…銭婆様…」

しかし、彼女たちは何も言わなかった。
ただ、憂いを帯びた目で私を見つめるだけ。

「何か…あったんですか」

…沈黙。

「…ハクになにかあったんですか?」

悲しみの奥→←氷のよう



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
83人がお気に入り
設定タグ:ハク千 , 千と千尋の神隠し , ジブリ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

やっさん(プロフ) - なるほど。結婚してから、王位を継ぐの理由のひとつに、一人では、王の仕事が多すぎて、手に負えない事情も、あったのですね。二人で協力して、やっとなんとかなる激務、王様も楽ではない汗汗。 (2020年6月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - ゆきさん» ちょっとし、思いっきりですが、リクエストよいでしょうか?龍神屋敷の、設定で、千尋が、家臣の扱い方が、わからないために起こした、お笑い騒動を書いてみてはどうでしょうか。どんな、騒動が、あったか興味があります。 (2020年6月8日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハク様が、龍神お化け屋敷に、帰るのですね。ルイと沙羅姫様の問題にも決着をつけるべきですし、まだまだ、前途多難の波瀾万丈ですね汗汗。余談、千尋さん、女官の方々をうまくつかえるのか??千尋が、屋敷に珍騒動を巻き起こすか(^^;;。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハクの子供が、危ない汗。確かに、千尋とハクの子供には呪いが... 。呪いをとかないまま子供を作るのは、無謀なのか!?!? (2020年5月23日 22時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - 早う、暖かくして上げて!!! (2020年5月22日 17時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Yuki | 作成日時:2020年2月10日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。