茶葉の香りが ページ16
柔らかいシルクのソファーにストンと腰掛けると、目の前にあるアンティークの小机に置かれたティーポットの蓋を開ける。湯気がたっているので、いれたばかりなのだろう。
いちいち立ち上がるのが面倒くさいのだが、棚からお気に入りの薔薇の蕾のティーカップを取り出そうと、絶賛電話中のお婆さまの机の横を通り過ぎる。
「ああ?あのタミかい?まあ、手際は悪く無いと思うけどね。容姿も良いし」
…多分、兄役か父役とタミの配属先を相談しているのだろう。
「今ハクが面倒をみているようだけどね。まあ、帳簿でもいいんじゃないかい?」
…………何だろうこの気持ち。
なんか、嫌だ…
「千尋。あの子は1日お前の大好きなハク様と居るんだろう?」
「そうですよ。1日ずっと」
「そうかい。ああ?帳簿はもう人が足りてる?じゃあねえ…」
ティーカップに熱い紅茶を注ぐと、ハーブの良い香りが広がった。
……いくらあの子が可愛いからっていって…ハクが心移りしたりしないよね。
「さて。次から次へと新入りが入ってくると大変だねぇ…」
「お婆さま、昨日はハクに何の話をしていたんですか?」
「ああ。湯屋の分館の話をね」
「ふーん…」
「…どこ行くんだい?」
「ちょっと外に」
別にここが死ぬ程暇だからって訳ではないが、外の空気を吸いたくなって、紅茶を一口だけ口にして立ち上がった。
…違う。ハクとタミが今どんな様子か見たいだけだ。
**
「…この計算は、この経費と人件費の関係を調べれば簡単なのだよ。だから桁は多いがうまい具合に計算して…」
「…なるほど。こうすればいいんですね。」
「そうそう。」
…ふと帳簿部屋を覗くと、小さな文机にハクとタミが座り、仲睦まじげに話しているように見える。
…いや、近くない?いくらなんでも。二人の頭がくっつきそう。
別に拗ねた訳じゃない。そんな訳じゃないけど…
「ハク様?」
「うん?」
「ここはどうやって出せば?」
「ああここは…」
絶対普通なら好きになるよね…普通の女の子なら…
「あれ?千尋様?ハク様に御用でしたらお呼びしますが…」
ビクッ!驚いて心臓がどうにかなるかと思った。
ああ…帳簿の狐男か…
「いえ…なんでもないです…」
その場を離れる私を不思議そうに見る狐男だったが、私は複雑な心境で裏庭へと足を進めた。
**
「おい」
「はい?ハク様」
「千尋の声が聞こえた気がしたのだが」
「はい。先程外へ行かれましたが…」
その言葉を聞いて、ハクは軽く首を傾げる。
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やっさん(プロフ) - なるほど。結婚してから、王位を継ぐの理由のひとつに、一人では、王の仕事が多すぎて、手に負えない事情も、あったのですね。二人で協力して、やっとなんとかなる激務、王様も楽ではない汗汗。 (2020年6月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - ゆきさん» ちょっとし、思いっきりですが、リクエストよいでしょうか?龍神屋敷の、設定で、千尋が、家臣の扱い方が、わからないために起こした、お笑い騒動を書いてみてはどうでしょうか。どんな、騒動が、あったか興味があります。 (2020年6月8日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハク様が、龍神お化け屋敷に、帰るのですね。ルイと沙羅姫様の問題にも決着をつけるべきですし、まだまだ、前途多難の波瀾万丈ですね汗汗。余談、千尋さん、女官の方々をうまくつかえるのか??千尋が、屋敷に珍騒動を巻き起こすか(^^;;。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 千尋とハクの子供が、危ない汗。確かに、千尋とハクの子供には呪いが... 。呪いをとかないまま子供を作るのは、無謀なのか!?!? (2020年5月23日 22時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - 早う、暖かくして上げて!!! (2020年5月22日 17時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yuki | 作成日時:2020年2月10日 1時