これは何かの勘違い ページ7
「──！！」
後ろを振り返ろうとすると、突然肩に走る衝撃。
「きゃっ─！」
そのまま横向きに倒れかけ、立て直そうと体をひねったら、今度はぐいっと肩を掴まれ強く引き寄せられる。
「なっ、な、なにっ…」
地面に倒れる男が三人見える。
「……君さ、もっと体幹鍛えなよ。もうちょっとで倒れるとこだったじゃん」
思ったより近くで声が聞こえてビクッとする。
顔を上げると、すぐ近くの綺麗な浅葱色の目とばっちり目が合った。
ドクン
強く、心臓が跳ねる。
「怪我は？」
「っ………！」
「ちょっと聞いてるの？怪我…」
「なっなっないです！！」
「うるさい」
至近距離の私の叫びがうるさかったらしく、彼は顔をしかめて手を離した。
「ほら早くして。急いでるんだから」
「は、はい…」
それにしてもこの人たちは…
「あのー、この人たち、このままでいいんですか？」
「いいよそのままで。僕らを襲おうとして返り討ちに遭ったんだから自業自得でしょ。どうせ“女ふたり”が歩いてるとか思ってたんだろうし」
「は、はぁ…」
“女ふたり”、めっちゃ強調したなぁ…
確かに女の子に見えるけど、まさかそうですねとか言えるはずもなく、適当な相づちを打つ。
「………」
「………」
さっきとは打って変わって、ふたりの間に沈黙が訪れる。
まだ少しだけ熱を持った頬を、涼しい風が撫でて冷やしていく。
───私、さっき、ちょっとだけ……ドキッとした？
……いやいやいや！ないないない！
あんな冷たくていけ好かない態度の男の人にドキッとなんてしない！！
私は優しい紳士的な男の人がいいんだから！！
男の子と急に距離が近くなって、慣れてないからびっくりしただけ。そうそれだけ。
これはきっと、何かの勘違い。
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作者名：merry | 作成日時：2020年12月13日 23時
