綺麗な少年の裏の顔 ページ6
「は？」
「あ…！ごめんなさい！」
無表情だった顔に少しだけ怒りが現れ、眉間にしわが寄る。
「……君、会ったことあるっけ」
「いや、ないと、思いますよ…」
「そう」
え、聞いといてそれだけ？！
途端にまた顔から感情が消える。
ふいっと体の向きを変え、立ち去ろうとしたその人を慌てて呼び止める。
「あの、」
「何？僕今忙しいんだけど」
「いやのんきに桜眺めてましたよね…」
「別に眺めてないしこれから用が…あ、そうだ。君、あの人の屋敷知ってる？なんだっけ、えーと…何柱だっけ…」
「柱の方のお屋敷ならだいたい分かりますけど…」
なんだろうこの人、忘れっぽいのかな。
「この近くに住んでると思うんだけど、」
「もしかして、恋柱ですか？恋柱の甘露寺蜜璃さま」
「ああ、うん。たぶんその人」
「だったらうちです。今は恋柱がお留守ですので、言伝やお荷物でしたらお預かりしますよ」
「うち？君、恋柱の屋敷の女中か何か？」
「へっ？！」
え、女中…？
「私は恋柱の継子、久賀Aです！」
「継子？剣士なの？」
「そうですよ！この刀が見えないんですか…ってあ、そうだった…」
今日は珍しく非番だったから、この間買った着物を着てるんだった。重いし刀も持って来ていない。
「なんでもいいから屋敷に連れてって。取りに行くものがあるんだ」
「いやあなた誰ですか！？まず名乗ってください！」
「言ってなかったっけ、時透無一郎。霞柱」
「ときと…え？霞柱！？」
嘘でしょ、柱？！このぼんやりした男の子が！？
「何？なんか文句あるの？」
「文句とか言ってな」
「早くしてよ、柱はただの継子の君とは違うんだから。もうすぐ日が暮れる。柱の俺は夜警に行かなくちゃいけないの。分かる？」
「分かってます！柱の継子なんですから！！」
この態度、いくら柱でも癪に障る…！！
まさかこんな裏の顔があるなんて…
「もうちょっと速く歩けないの？」
歩き出しても馬鹿にしたような冷たい態度を崩さない。
「あなたが速いんです！背はそんなに変わらないのに…！」
「いやどう見ても君の方が小さいよ」
「そんなことないです！だいたい歳だって変わらないでしょう？」
「俺は十四だけど、君は？」
「私は十三です！」
って言うか、そう言えば師範が言ってたな。
霞柱は私の一つ上で、ぼんやりした男の子だって。
「やっぱり君の方が年下じゃん」
「ひとつなんてそんな変わらないじゃないですか！だいたい柱だからってその態度──」
後ろから突然、人の気配がした。
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作者名：merry | 作成日時：2020年12月13日 23時
