なんだろ、この感じ ページ6
「あ、ごめん。連れが来たかも」
突然先輩が階段の下を見遣った。
「俺耳がよくてさ、もうすぐ上がってくる音が聞こえるはずだよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、コツ、コツとふたつの足音がきこえ始めた。
「ほ、ほんとだ……」
え、金髪先ぱ……我妻先輩、なんかすごい。
「Aちゃん、だったね。水曜日ならだいたいここで歌ってるから、よかったらまた聴きにおいでよ」
その笑顔がまた眩しくて、ドクンと胸が大きく跳ねる。
「は……はい」
「じゃあ、また!」
先輩は屈託なく笑って見せたあと、階段を降りていった。
「さよなら……」
人見知りが祟ってなのか、ろくな受け答えができなかった自分に少しだけ後悔する。
あの、我妻先輩の歌……すごく、綺麗だった。
それに……
……私の歌、褒めてくれた。
──またいつか聴きたいなあって思ってたんだ。
先輩の言葉を思い出して、胸の奥がじんわりと温かくなった。
なんだろ、こんな感覚知らない。
また、会いたいな。
会って、話してみたい。
そんなことを考えている自分に少し驚きながら、私も鞄の持ち手を握り直し、階段の下に足を向けた。
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作者名:merry | 作成日時:2020年11月29日 21時