ほんのちょっとだけ、 ページ18
「じゃあ、具体的に合わせんのは来週末ってことで、今日は解散!」
「ああ!早見さん、今日は楽しかったな。これからよろしく!!」
「よろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
たっぷり二時間、カラオケで歌ってから、私たちは店の前で別れた。
先輩への恋心を自覚したあとも、思いの外冷静な自分に少し驚く。
本当はもっと前から、自分でも気づいてたのかもしれない。
嘴平先輩が落ち着き無く走って行く後ろを、竃門先輩と栗花落先輩が並んで帰る。
「Aちゃん、送ってくよ。どっちの方?」
「え、そんな…先輩たちと一緒に帰らなくていいんですか?」
「これから寄るとこあるから、どっちみちアイツらと方向逆なんだ」
「そうなんですか…えっと、こっちです。あの、寄るところと違ってたら無理しなくても…」
「こっち?じゃあ一緒だ!ラッキ〜」
行こっか、と微笑んで歩き出す。
「今日は付き合ってくれてありがと。無理言ってごめんね」
「いえ!楽しかったです!」
先輩たちは優しくて、面白くて、とても楽しかった。
中学の時のこともあるし、会う前は不安でいっぱいだったけど、我妻先輩のお友だちだし、やっぱり心配はいらなかったみたいだ。
「ならよかった〜、ちょっと心配してたんだよね」
「心配…?」
「あ」
首をかしげた私を見て、先輩がやらかした、という表情になった。
「あー、えっと……あのさ、Aちゃんって…」
たっぷり悩んでから、目線を斜め上に向けたまま、先輩が言いにくそうに口を開いた。
「…ひょっとして、先輩苦手?」
「!」
バレてたんだ……
誤魔化すか、正直に言うか、少し悩んでから口を開く。
「……少し、苦手です」
「…そっか」
「で、でも、今は大丈夫です!昔、ちょっといろいろあっただけなので…我妻先輩も、今日会った先輩たちも、みんないい人たちでした!」
「……よかった。Aちゃんに嫌われてなくて」
そう言って、先輩は、心底安心したように笑った。
「Aちゃんに嫌がられてたらどうしようかなって思ってたんだよね。今、結構安心した」
嬉しそうに笑う先輩に、また少しドキッとする。
私に嫌われてないことが、そんなに安心したのかな……
それは、ただの後輩としてだとしても、私のことを少しでも好意的に思ってくれてる、ってこと…だよね?
ほんのちょっとだけ、期待してもいいのかな。
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作者名:merry | 作成日時:2020年11月29日 21時