Like Salome 32 ページ23
無事、Aが帰宅したのを見届けて、
有栖は火村の下宿のソファーの上にいた。
「告白をした…？」
「おぉ。」
火村が思いっきり眉を寄せて言う。
「Aにか？」
「せや。」
他に誰がおるんや。
訝し気なその表情が気に入らんくて
クッションに顔を埋めながらつぶやく。
「なんて？」
「好きや。って…。」
一瞬の間。
「アリス、聞いてもいいか？」
「…なんや。」
「何故このタイミングなんだ。
断られるのは目に見えている。」
「…。」
「わざわざ思いを伝えるんだ。
少しは勝算があったんだろう？
お前、つい最近まで鷺尾優子にぽーっとしているところを
Aに見られておいて。
なぜいけると思った。」
「…。」
「挙句、この距離感だ。
うっとおしいとまで言われて、告白をしようと思ったお前の心理がわからん。」
「まぁ。そう言われたらそうなんやけど…。」
今言わないと、通じない気がした。
伝えないと…間に合わない気がした。
「まあ、焦る気持ちはわからなくもないが…。
で、Aはなんて？」
「”ありがとうございます。”やって。」
「なんだ、うまくいったのか？」
字面だけ追うと、そうもとれるのか。
しかし、そんなわけないのは、
きっと火村も分かっているはずだが…。
「多分、ちゃうな。」
あれは、気持ちは嬉しいです。ありがとうございます。
っていう、体のいい断り文句だろう。
「遠回しにお断りや。」
「…お前はなにがしたかったんだ？」
「なにって…。」
このまま距離を置かれるのが嫌だった。
「好きやから…。
なんか…助けになりたくて。
だって、あんな態度変やろ？
Aちゃんぽくない。」
「なにか…巻き込みたくないことがあるんとちゃいますの？」
タイミングを計ったように、時絵がコーヒーを運んできて言う。
時絵さん、絶対盗み聞きしてたやろ…。
「単純に、お前のことが好みじゃないのかもしれないぞ。
年だって大分離れている。」
「…巻き込みたないって…何に？」
火村のコメントはいったん無視して、
時絵の言葉を反芻する。
「それは…わかりませんけど？」
時絵は珍しく、
難しい顔のまま奥へと下がっていった。
「火村…。
お前はどう思っとるんや？」
「アリスは馬鹿なのだろうかと思っている。」
「…あのな…。」
「まぁ、それはさておき。
Aの態度がおかしいのは確かだ。」
ふむ。
と火村は顎に手を当てて言った。
Like Salome 33→←Like Salome 31
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結姫(プロフ) - 黒猫さん» 黒猫さん、コメントありがとうございます！わたしも機種変で久しぶりに占ツクを開きました。久しぶりに読み直して更新してみようかなーと思う温かいお言葉ありがとうございます (2021年11月30日 22時) (
レス) id: 3be09aaa01 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 。久しぶりに占ツクを開いて、初めから読んでいますが何度読んでも、この回と今？最新のあたりはちょっと苦しくなるくらい物語に没頭してしまいます。つい読み返してしまう作品です。あまり頻繁には読めていませんが、面白いのでこのまま最新まで読み進めたいと思います (2021年11月5日 2時) (レス) id: 65cf13def1 (このIDを非表示/違反報告)
結姫(プロフ) - みほさん、ありがとさんです♪11も今晩には公開予定です＾＾ (2017年4月7日 11時) (レス) id: aa658a14f4 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 10巻完結おめでとうございます！！11も楽しみにしています♪ (2017年4月7日 10時) (レス) id: ffa53d8167 (このIDを非表示/違反報告)
結姫(プロフ) - アソパソマソさん» アソパソマソさん、それです(笑)と言うことで、分岐点は13の予定…。着実にシャングリラの……あとは読んでいただいてのお楽しみ♪ (2017年4月7日 7時) (レス) id: 2910946d8c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：結姫 | 作成日時：2017年3月6日 22時
