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何やらカッコ良さげに解説しているキリトにぼそっと突っ込むと、途端に言葉を詰まらせる。
リズベットもじとーっと睨んで─────
「ま、まぁ、いろいろ試してみようぜ! 脱出のアイデア募集中!!!」
誤魔化すように声を張り上げるキリト。
それに乗せられたわけではないけれど、いつまでもこうしてはいられないので、私も解決策を探すべく周囲を見渡す。
ここは、ほぼ平らな氷の床に雪が薄く積もった、まさに穴の底だった。
直径は上部と変わらず10メートルほどだろうか。遥か高みの入口から、氷壁に反射しながら、頼りない夕陽の残照が差し込んでくる。
じきに完全な暗闇に包まれてしまうだろう。
そしてさらに困ったことに、
見たところ、地面にも、周囲の壁にも、
抜け道のようなものはない。
「助けを呼ぶっていうのはどうかしら?」
「ここ、ダンジョン扱いじゃないか?」
「…………うん。メッセージ、いま見たら使用不可になってる」
「じ、じゃあ、ドラゴン狩りに来たプレイヤーに大声で呼び掛ける」
「山頂まで高さ80メートルはあったからなぁ……声は届かないだろうな……」
「そっか……って、あんたもちょっとは考えなさいよ!」
次々に意見を却下されて、リズベットがむくれる。
すると、キリトはとんでもないことを宣った。
「壁を走って登る」
「「…………バカ??」」
「傷つくからハモるのはやめてください」
真顔でそう言って、とにかく試してみるか、と壁ギリギリまで近づく。
そして突然反対側の壁目掛けて猛ダッシュした。
壁に激突する寸前、キリトは一瞬身を沈めると爆発じみた音とともに飛び上がる。
遥か高みで壁に足をつき、そのまま斜め上方へと走り始めた。
「うっそ……」
「……………デタラメ」
私達がポカンと間抜けに立ち尽くす、その遠い頭上で、キリトがアメリカ製C級映画の忍者のごとく、氷壁を螺旋状にかけ上がっていく。
みるみるうちにその姿は小さくなり───────────────────────3分の1近くも登ったところでツルンとこけた。
「わああああああ!!!」
「きゃあああ!?」
「………………っ、」
両手をバタバタ振り回しながらキリトが落ちてくる。私達の頭めがけて。
……思わず飛び退って避けると、寸前まで立っていた場所に、
びたん!!!という音とともに人型の穴が穿たれた。
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時