番外編3 (side.K) ページ16
「……寝ちゃったね」
Aが、シリカの頭を撫でる。
ベッドに横になって寝息を立てる少女の眠りを妨げないように。そっと。
「良かったじゃないか。子守唄〜なんて言っといて逆効果だったらそれこそ──」
「……キリトには今後一切聴かせない」
「わー嘘ウソ！！！ 聴きたいです、聴かせてください！」
じゃれあうような、いつものやり取り。
……でも。続くAの言葉で、俺は息が詰まりそうになった。
「…………鳩笛(オカリナ)のおかげも、あったら嬉しいけど。一番は“傍に居てくれる誰かが居るから”かもしれないね」
「──────っ」
傍に居てくれる、誰か。
……そうしてくれるだけで良いと思えるほど大切な────────
「俺は？」
「………………え」
「俺は、Aにとって、そういう存在になれてる？」
Aが息を呑む。
……返事を待つ時間を途方もなく長く感じた。心臓の音が、部屋中に鳴り響いているみたいで。
「…………キリトは。“大切”、だよ」
何故だろう。
凄い言葉の筈なのに、嬉しくない。
……はぐらかされていると直感して、それも違うと思い直す。
告げられたことも“真実”だ。
ただ、俺の欲しい答えじゃないだけ。
(────だって、ほら)
またAは悲しそうに微笑んでる。
『…なぁ、キリトよう。お前らってどういう関係なんだ？』
いつかのクラインの言葉が耳に蘇る。
……そんなの、こっちが教えてほしいくらいだ。
離れて行かない代わりに。
Aは、明確な答えをくれない。気持ちが見えない。いつも。
(だけど、Aばかりを責められないんだよな……)
俺だって、逃げている。
こういう時すぐに口を閉ざしてしまう。曖昧なまま、追及していない。何も。
聞いたら。
彼女の隠し事を、暴いたら。
何かが確実に変わってしまう気がして────
(…………でも、遠い)
いまこの瞬間も。
同じ世界(SAO)に居る筈なのに、隔たっている。
手を伸ばす。
…………当然、届かない。Aが不思議そうに首を傾げる。
(でも、いつか。どうしようもなくすべてを知りたくなる気がする)
Aのすべてを。
……それが、俺たちの“何か”を決定的に変えてしまうとしても。
彼女を繋ぎ止める為に。
堪らなく手を伸ばす、そんな日が近く来るような気がした。
今度こそ、この手に彼女を捕まえるために────
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です！！もう更新してくれないのでしょうか？続き楽しみに待ってます！ (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます！！！ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…！前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kizuna | 作成日時：2017年4月9日 16時
