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「疲れた。まさかフラグ立てでこんなに時間を食うとはな……」
「まったくね……あの長老のヒゲをむしってやりたいわ」
「…………システム的に不可能」
「知ってるわよ!」
「…………なのが残念」
「「え」」
などと阿呆な会話をしながら、私たちはひたすら雪道を登っていた。
ここは加治屋の間で噂になっている、貴重な武具素材を持つという竜の棲む山で、件のドラゴンは登頂にいるらしい。
……という話を長老から聞き出してクエスト発生のフラグを立てるのに異様に時間がかかり(なぜなら話が恐ろしく長い上に至極どうでもいい内容だったからだ)、みんな少し疲れた上での登山になってしまった。
とはいえそこまで難易度が高い山ではなかったらしく、今のところ順調に行程をクリアしている。
「さぁ!あんたが泣きべそかくとこ早くみたいし、どんどん行くわよ!!」
「そっちこそ、俺の華麗な剣裁きを見て腰抜かすなよ」
「……二人ともうるさい。敵、出てるんだから、集中して」
ピシャリと言って、なぜだか口喧嘩がデフォになりつつある二人を止める。
このやりとりすら恒例になりつつある気がするから怖い。
雪道を登ること数十分。
一際切り立った氷壁を回り込むと、そこがもう山頂だった。
「わぁ……!!!」
思わず、といったようにリズベットが歓声を上げる。
それくらい幻想的な光景が広がっていた。
雪を突き破って巨大なクリスタルの柱が伸び、残照の紫光が乱反射して虹色に輝いている。
「きれ───ふぐっ、な、なにすんのよ!!」
「おい、転移結晶の準備しとけよ」
駆け出そうとしていたリズベットの襟首を捕まえて、キリトが言う。
その真剣さに呑まれたのか、素直に頷いてクリスタルをオブジェクト化してくれた。
「それから、ここからは危険だから俺とAでやる。リズはドラゴンが出たらその辺の水晶の陰に隠れるんだ。絶対、顔を出すなよ」
「なによ、あたしだってそこそこレベル高いんだから、手伝うわよ」
「ダメだ!!!」
真剣な叫びが辺りに響く。
リズベットは驚いたようにキリトをまじまじと見て、それから何か悟ったようにこくりと頷いた。
────空気が、変わる。
こういうところは、さすがだなと思う。
“生死の境を意識させられる”──それは即ち本当に相手を案じているからだ。
強いのに。
……ともすればPK側にだって回れるのに、決してその一線を踏み越えない。
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 - 15-4〜16-7までの流れが、主人公の葛藤と矛盾が鮮明に描かれていて心に刺さりました。この作品面白いので更新頑張ってください。応援させていただきます。 (2018年11月14日 20時) (レス) id: 10e431e9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - シリアス大好きです。この二人がこのあとどうなるのか気になります。更新お忙しいと思いますが、頑張ってください。楽しみにしてます。 (2018年11月6日 21時) (レス) id: 6cc7262479 (このIDを非表示/違反報告)
コトノハ - この作品、私のどストライクな作品です!!もう更新してくれないのでしょうか?続き楽しみに待ってます! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 611c145fdc (このIDを非表示/違反報告)
Kizuna(プロフ) - アリスさん、コメントありがとうございます!!!ヘ(≧▽≦ヘ)♪ そう言って頂けるととても嬉しいです…!前回更新からだいぶ長いこと時間があいてしまいましたが、またちょこちょこ書いていきますので、よろしくお願いします(*≧∀≦*) (2018年1月19日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年4月9日 16時