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……そして、15回目か16回目の攻防に、それは訪れた。
「しまっ…………!!!」
弾き(パリィ)の失敗。
ボスではなく私がしばしの硬直(ディレイ)を与えられ、野太刀が直撃する。
……悲鳴すら上げられずに吹き飛ばされ、無様に床を転がり、追撃がくるのを為す術なく見上げて───
「ぬ……おおおっ!!!」
───しかし、それがヒットする寸前、雄叫びとともに飛び込んできた褐色の肌の人物が両手斧系スキルで相殺させた。
肩ごしにこちらを振り返って告げる。
「あんたがPOT飲み終えるまで、俺たちが支える。ダメージディーラーにいつまでも壁(タンク)やられちゃ、立場ないからな」
「………………っ」
ありがとう、その言葉が全身の痺れに邪魔されて出てこない。けれどエギルは分かっているというように頷いてくれた。
震える手で回復ポーションを取り出し飲み干すと、よろよろと立ち上がる。
……見回せば、彼を含め比較的傷の浅い者たちが回復を終えて戻ってきていた。
彼らを指揮するキリトは、驚異の集中力でボスのソードスキルを相殺し続けている。
…………そして、アスナはそんなプレイヤーたちの間を軽やかに飛び回り、渾身の《リニアー》を放っていて。
──────やがて、ついにボスのHPが残り3割を切った。
そのことに気が緩んだのか、壁役の一人が足を縺れさせてボスの《旋車》を発動させてしまう危機(ピンチ)も、
「届……けェ────ッ!!!」
すかさずソードスキルを放ったキリトがボスの《転倒(タンブル)》という好機(チャンス)に変えてしまった。
間髪入れずに全力攻撃(フルアタック)の号令が下され、今までの鬱憤を晴らすかのような猛攻が起こる。
────予感がした。
それを振り払うためか、
それともこの先の展開を予期していたのか?
……わからない。けれど、足がひとりでに動いて駆け出す。
全員の攻撃が止んで、誰もが技後硬直(ポストモーション)を課せられるなか、ゆっくりとコボルドロードが身を起こした。
「last attack、よろしく。キリト」
「…………!!!」
緩やかだった走りを、いつしか全力疾走(トップギア)へ。
……POTの回復はまだ終わっていない。でもそれすらどうでも良かった。
どうせ、これで決まる。
ついに立ち上がったコボルド王の巨躯がぐっと沈み、垂直ジャンプの予備動作に入る────
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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時