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あの時。
現実のキミを知るなんて選択をしなければ。

……今、ここで、知らないフリができたのに。


「…………………。ひ──」
「人違いだ、なんて言っても信じないからな。俺の名前呼んでたし、それに、その“声”を聞き間違えるはずない」

βの時はボイスエフェクタなんてなかったからな、みんな自分の声そのままだったハズだ。
私の台詞を喰い気味に言われた上、理路整然と事実を突きつけられては言い逃れもできない。

諦めて、ひたすら重いため息をつく。

「……そうだよ。私は、Aだよ」
「やっぱり。久しぶりだな」

嬉しそうに笑うキリト。
……ひとの気も知らないで。

「また逢えて嬉しいよ。Aって、そんな顔だったんだな」
「……どうせ可愛くないよ」
「まだ何も言ってないだろ!? それに──」

なにやら慌てて弁明するキリトの言葉を聞き取る余裕もなく、唇を噛み締める。


(…………私は逢いたくなかったよ、キリト)


キミにだけは。
私が果たさなきゃならない役割に、叶えなきゃならない願いに。
………………巻き込みたくなかったよ。


「なぁ。ここに居るってことは、次の村に行くんだろ? どうせなら一緒に行かないか」
「…………」
「A?」

ここで断ったら。
キリトを巻き込まずにすむだろうか。
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
約束があるんだとか、人を待ってるとか適当なことを言えば、あるいは。

(…………いや。きっと、キリトは気づく)

そういうとこだけ妙に勘がいい。
本人は長年ネットゲームに明け暮れてる成果だ、とかふざけてたけど。
誰かの隠し事に対して恐ろしく鼻が利くんだ。


「……わかった。ホルンカの村まで一緒に行こう。でもひとつ条件がある」
「?」


「一緒には行く。モンスターを斃すのも協力するよ。…………でも、パーティは組まない」


言い訳に過ぎないとわかっていても。
キミが“そう”だとは認めたくない。
……私が捜していた人だとは思いたくないんだ。どうしても。


「理由も話さない。それでも良いなら、一緒に行くよ」


まるで挑むようにキリトを睨む。
こんなことを言われたら普通は断るだろう、そう思っていた。
どこかでそれを期待する気持ちもあった。
…………なのに。


「そうか。いいよ、それで」


一緒に居れたらそれでいいよ、と笑うんだ。

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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時

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