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「……ここまで来ればいいかな」

夜。
アスナにお風呂を貸すため、宿──キリトと私で割勘して借りている農家──に戻ったキリトたちと別れて、私はトールバーナの町の風車塔にいた。

正確には、風車塔に備えつけられている古びた木製の扉を開けて中に入り、ぐるぐると回りながら少しずつ上に向かう階段をひたすら登って最上階にいた。

……眼下には、ぽつぽつと原始的な灯りを点す民家の群れ。
そのどれかには明日のボス攻略を控えたプレイヤーたちのもあるに違いない。


(……いよいよ、明日、か……)


そのことに何か思うような……たとえば緊張と不安で眠れなくなるみたいな繊細さは持ち合わせていないつもりだった。

それなのに、実際は、ここで落ち着かない気持ちを持て余している自分がいて。


情けない、とため息をつく。

せめて明日のためになることをしようと鳩笛(オカリナ)を取り出して練習していると────


「…………下手、だね」


とんでもなく失礼な感想が飛んできた。
ムッとしながら振り返り……私は眼を丸くした。そこには、攻略会議で何度もみんなの先頭に立ってきた青髪の騎士(ナイト)がいたからだ。

「わざわざ《音楽》スキルで参加したいなんて、どんな酔狂か凄腕か、と思っていたけど。前者だったみたいだね」
「……私のスキルレベルが低いことは、事前に伝えた。それでもいいと言ったのはそっち」

確かにね、とディアベルは苦笑する。
その落ち着いた話しぶりに、私はまじまじと彼を見る。これはおそらくこっちの方が素だ。
……つまり会議でのキャラは演技(ロール)なのだ。

「……にしたって、他になかったのかと思わなくもないけど」
「? 何か言った??」
「……別に。どうして会議ではあんなキャラなの」

実際に口に出したこととは違うけれど、本筋としては間違ってないことを問うと。
ディアベルは気恥ずかしそうに頬をかいた。

「あれは、その……ああいうキャラの方がみんなが纏まってくれるかなって」
「………………」

では、計算ずくだったということだ。あの会議での何もかもが。

「───の」
「え?」
「何のために、そこまでするの」

自分を偽ってまで。
無邪気に明るく、みんなのための騎士(ナイト)を演じてまで何を望んでる?


「……決まってるじゃないか。この世界からの“脱出”だよ」
「────!」

7-2→←*作者より



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Kizuna(プロフ) - わあああすみません!!!ご指摘ありがとうございます(>o<") (2017年3月7日 14時) (レス) id: 62524f433b (このIDを非表示/違反報告)
ネムム(プロフ) - オリジナルフラグを外してくださいねー (2017年3月7日 13時) (レス) id: 2bd2d16489 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kizuna | 作成日時:2017年3月3日 20時

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