番外編#2 自覚(2) ページ18
レオリオ「で、何が聞きたいって?」
レポートを提出し終えた彼がそう言った。実験がある日は、こうやって駐車場まで一緒に向かうのが日課になりつつあった。
くだらない話や口喧嘩ではなく、真面目な話をするのは今日が初めてだったので、何となく彼は居心地が悪そうだった。
「__貴方、どうして医者になろうと思ったの。」
レオリオ「…。」
彼は目を丸くした。
曰く、「お前そんな事気にするんだな。」とのこと。
「答えなさいよ。」と急かすと、頭を搔いて言った。
レオリオ「金だよ金。」
「嘘つき。」
レオリオ「あ゛?」
「ハンターのくせに。」
お金なんてハンターの方が何百倍も稼ぐことができる。それなのに、態々医者を選択した理由が分からなくて尋ねたのだ。
諦めたように溜息をつくと、彼は口を開いた。何故そこまでして隠したがるのかはよく分からないが、表情から察するに最後まで隠し通そうとしていたことが見て取れた。
レオリオ「昔、ダチが流行病で死んだんだ。金が無かったから手術を受けられなかった。」
「…。」
レオリオ「俺はそこで決心したんだ。無償で沢山の人間を救ってやるんだって。…だけど、皮肉なことにそれにも莫大な金がかかるらしい。」
ハンターになったのは、あくまでも医者になる為の資金集めでしかなかったと彼は言う。その告白は思いがけないもので、経済的な面では何一つ苦労したことのない自分が嫌に思えてきた。
「…あなたは私を恨む?」
レオリオ「どういうことだよ。」
「きっと楽な道を歩んできたわ。医者を志したのも藤沢家の一員だから。」
何だか、彼が違う所に居るように感じて私は足元を見た。
レオリオ「__でも、今は違うだろ。お前は真っ直ぐに命と向き合おうとしている。親の差し金だけで医者を目指した奴が、態々被検体を弔うなんてことはしない。」
「…。」
レオリオ「それに、俺がお前らを恨むことはねぇ。腐っても、俺達は同じ道を志す仲間だ。」
「……貴方って本当に__」
レオリオ「あぁ?」
「………いや、何でもない。」
本当に彼は眩しい。
時に、隣に立つことに罪悪感を感じるまでに。
彼はとても強く、真っ直ぐに生きているんだ。
(私も彼みたいに強い人になりたい。)
___…そうか。
私は彼のことが……___
レオリオ「…何だよ、急に黙り込んで。」
「ふふ、何でもないわ。とても重要な事に気付けたの。」
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かにかま(プロフ) - ミユミユさん» コメントありがとうございます。関心を持っていただけたようで何よりです。 (2020年4月18日 21時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
ミユミユ(プロフ) - とっても面白かったです!! レオリオてなかなか見ないので、この作品を見て気になってきました!! (2020年4月17日 17時) (レス) id: c90b9e15eb (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 音かなでさん» コメントありがとうございます!わわっ、勿体ないくらいのお褒めの言葉とても嬉しいです。そして、愛を感じていただけて何よりです笑 誤字は私もしょっちゅうしてしまいます。気になさらないでください。次回作も宜しければ、お付き合いくださいませ。 (2020年2月24日 21時) (レス) id: 39e4a96b67 (このIDを非表示/違反報告)
音かなで(プロフ) - あっすいません、文がおかしくなってました…“いつも楽しく読ませていただいてます”でした!失礼しました (2020年2月24日 21時) (レス) id: 73c7ce9b4a (このIDを非表示/違反報告)
音かなで(プロフ) - あー面白かった!!かにかまさんって、キャラクターをちゃんと理解してくれていて読んでいて気持ちがいいです。ハンターハンターへの愛を感じますwいつも楽しみに読んでいただいてます。これからも頑張ってください! (2020年2月24日 21時) (レス) id: 73c7ce9b4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かにかま | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時:2020年2月11日 20時