#91 ページ11
月が満ちた。
湖で汗を流した私は、二人を起こさないようにそっと寝床を確保するのが常なのだが、今日は少しだけ違った。
クラピカ「あ、Aか。」
起こされたクラピカの背中に尋ねると、眠れないのだと言う。
クラピカ「昔のことを思い出してしまったからかもしれないな。」
彼はぼうっと遠くを眺めながら呟く。
そんな姿に私は少し萎縮した。
以前耳にした彼の過去は余りにも壮絶だったから、彼の心持ちは穏やかではないと思ったからだ。
クラピカ「ははは、そんな顔するな。クルタへの奇襲よりもずっと前のことだよ。ただ一緒に外の世界を目指した、昔の親友のことを思い出しただけだ。」
「そっか…どんな子だったの？」
クラピカ「そうだな…私よりもずっとしっかりしていて＿＿＿…」
懐かしむように時に笑い 時に顔を顰めながら、彼は昔話をしてくれた。
その親友の病を治す医者を探し出すことが、元来の彼の目的だったのだという。
理解できないほどの彼の復讐への情熱は、当時の楽しかった思い出達の影響が大きいのだなぁと思った。
「その子と冒険するって夢、諦め切れなかったんだね。」
クラピカ「…そうなのかもしれないな。」
寂しそうにそう言うと、クラピカはまた遠くを見た。
何だか彼が遠くに行ってしまう気がして、焦って整理もつかない言葉をそのまま並べた。
「あのね！私回復系の念使いになりたいなって思うの。」
クラピカ「回復？それはまたどうして。」
「もしその子に会ったとしたら、私の念で治せるかもしれないじゃん。」
クラピカ「思いつきで決めていい事ではないぞ。」
「ち、違うよ！」
クラピカ「本当に？…じゃあ何で目が泳いでるんだ。」
「えっと、その……」
意外なことに、沈黙を破ったのは彼の方だった。
クラピカ「…なぁ、A。」
「ん？」
クラピカ「独りぼっちは辛いな。」
「そうだね。」
そっか、5年前の事件があってから彼がそうやって昔話を出来る人物は居なくなってしまったんだ。だから寂しそうに遠くを眺めていたんだね。
それは私にとっても言えることで、その深い悲しみを理解し得る分だけ彼に伝えたいことがあった。
「ねぇ、クラピカ。
貴方は独りぼっち、私も独りぼっち。だけど、二人いれば二人ぼっちだよ。」
クラピカ「…二人ぼっち、か。」
少しだけ彼の表情が柔らかくなったような気がして、自然と私の頬も綻んだ。
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かにかま(プロフ) - (名前)さきのさん» コメントありがとうございます。褒められると伸びるタイプなので、そう言って頂けて嬉しいです笑 今後ともお楽しみ頂けますように精進しますね。 (2019年10月1日 0時) (
レス) id: 39e4a96b67 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)さきの(プロフ) - 毎日1話ずつ更新してくださってありがとうございます！1日の終わりにこの小説を楽しみにしています^ ^更新頑張ってください！！ (2019年9月30日 23時) (レス) id: 7fbb21366a (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 林 香織?さん» 素敵なコメントをありがとうございます！ これから紐解いていくので、楽しんで頂けたらうれしいです(^^) (2019年9月24日 19時) (レス) id: 39e4a96b67 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - この小説めっちゃ好きです…ヒソカの大事な人の事も気になりますし、不器用な夢主、愛に気づかないクラピカ。めちゃくちゃ面白いです！更新ファイトです！ (2019年9月24日 16時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 音かなでさん» わわっ！とても励みになるコメントをありがとうございます。これからも楽しんでもらえますように精進しますね。 (2019年9月11日 22時) (レス) id: 39e4a96b67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a061/
作成日時：2019年9月6日 22時
