【忍たま】日々平凡【短編】 (ページ9)

今日:17 hit、昨日:3 hit、合計:50,769 hit

年頃の乙女とは-中在家長次ページ9

「うーん………」

と、唸る私は長屋に腰掛ける。

柄にもなく歌集なんて手にしながら。

きっかけはシナ先生から戴いた有難いお言葉(という名のお説教)だった。

──Aちゃん、貴女は年頃の乙女ってものが分かってないわ！

この前の実習、男性からお茶を奢って貰うという高学年にしては簡単すぎるそれに私はまさかの失敗をしてしまった。

着飾って、町中に出て、男性に声をかけられて………そこまでは良かった。

しかし、あまりにもその男の店員への対応が悪すぎたので苛立ってしまい、挙げ句殴り合いにまで発展してしまったのだった。

……あぁ、思い出すだけでも忌々しい。
穴があったら入ってしまいたい。

(悪いのはあの男だもん！………まぁ、私も町娘気取るにしてはほんの少しだけお転婆だったけど。)

ひょんな訳で年頃の乙女とやらを知る為に、歌集で研究をする羽目になったのだ。

聞くところによると、色恋を知るのが一番の近道らしいとかで。

「私だって人並みに恋くらいするし。……っていうか、何で結ばれないだけで身を投げるかね……」

やっぱり理解できそうにない。

諦めて本を放り出し寝そべる。

目一杯に広がる晴天は、鍛練に相応しい日光を差していた。

「鍛練……」

すると、廊下側から現れた人物が私の顔を覗き込むようにした。

「あー！長次だ！」

「……A、本は丁寧に扱うように。」

「はーい」

長次の微笑みが一瞬邪悪になったのに気付いて、私はすぐに起き上がり開いたまま伏せていたそれを膝の上に戻した。