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満月を君と、-七松小平太 ページ26
眠れない。そんな夜だった。
偶々縁側に出ると、偶々七松先輩と鉢合わせた。
会うと分かっていたなら髪を整えていたのに。羽織りだって新しい方を選んだのに。
なんて後悔している私をそっちのけで、先輩は手を差し出した。
「A、満月だ。屋根の上からならきっと見事だぞ。」
.
「月、綺麗ですね。」
そう呟いた後にすぐ、自分が何を口走ってしまったのか自覚して必死に取り消した。
しかし、先輩は気付かなかったのか、穏やかに月を眺めたままだった。
「美味そうだな。食べてしまいたい。」
「…………先輩」
「ん、どうかしたか？」
振り返った表情は、何とも柔らかに綻んだ微笑みで、暴君という渾名には相応しくなくて………。
それ、純粋な感想ですか。
分かった上でのそれですか。
結局尋ねる勇気が出ない私は、意気地無しだ。
「……何でもないです。」
不満気に口を付き出すと、先輩は笑った。
「本当、美味そうだなお前は。」
指先が唇の影をなぞった。
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平泉 - 団蔵の指輪の話が大好きです。書いていただきありがとうございます。心が満たされます。 (2023年4月1日 23時) (
レス) @page40 id: 06de6e20e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a062/
作成日時：2020年8月28日 12時
