【忍たま】日々平凡【短編】 (ページ24)

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世話焼きと世話焼かれ-富松作兵衛ページ24

慣れないことはするもんじゃないとは言うけれど、本当にその通りだなと現在進行形で感じている。鈍痛の滲む右手首を見せると、保健委員の数馬がすかさず塗り薬を用意してくれた。

「Aが一人で保健室来るなんて珍しいね。」

「そうかな。」

「いつも作兵衛といっしょじゃない。」

「あー………」

と、語幹を濁らせた私に彼は首をかしげる。

「そろそろ自立したくて。」

「自立？」

「作兵衛のお荷物みたいになるの嫌だもん。」

「別にお荷物だとは思ってないと思うけど……。」

確かに、数馬の言うことには一理ある。なぜなら富松作兵衛ってヤツは、人一倍責任感が強い人間だからだ。

あの方向オンチコンビを手綱で縛ったり、どこか気の抜けた雰囲気の委員会の後輩達を纏めたり……挙げればキリがないくらいにその言葉の通りである。

そんな彼の責任感は私にも適応されていて、入学当初からずっと私は彼に世話を焼かれているのだ。曰く、危なっかしいから野放しにできないとのこと。

しかし、私だってくの一の卵。守られるより守りたい。憧れの山本シナ先生のようになるためには、まずは作兵衛から自立しなくては。

そう思って一人鍛練を目論んだ矢先、手首を捻ってしまった。それも鍛練のせいではなくて、廊下で正面衝突してしまったからという………何という間抜けさだろう。

はぁ、とため息をつく。それを見据えて偶々保健室に居合わせていた孫兵が呟いた。

「作兵衛のAへの過保護さは、まるで海馬みたいだ。」

「どういうこと？」

「海馬の雄は卵が孵るまで腹で保護するんだよ。」

「へー……って、私、作兵衛の子供じゃないし！」

「ははは、Aってば必死だなぁ。そうは思わないかい、ジュンコ。」

「………。」

呆れてじとーっと見てやったが、彼は毒蛇ジュンコと熱い視線を交わしているので此方に取り合うことなどなかった。ははは、と数馬が乾いた笑みを浮かべた。