【忍たま】日々平凡【短編】 (ページ23)

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「あのさ、A」

「何」

「俺達そろそろ結婚しない？」

「…………………は」

普通このタイミングでそれを言いますか……？呆気にとられ言葉を失った私を、勘右衛門は他人事のように笑った。

いや、他人事ではないし、笑い事でもないのだが。

「この平和な国を出て、色んな世界を見て、やりたいことやって、あっという間に時間が過ぎていって……こんな人生も悪くないなぁと思ってたんだ。」

「……」

「でも、ある時ふと考えてみたんだ。こんな一瞬に過ぎていく人生の中で、後どれくらいAの側に居られるんだろうって。」

良くて半年に一回だろ。よく別れずにいてくれたよな。と彼は笑う。

狡いよ。理由なんて知ってるくせに。
それだけ好きだから離れたくとも離れられなかったのに。

「さっきA怒ったでしょ。」

「………………うん、怒った。」

「俺、そうやってコロコロ変わるAの表情が好きなんだ。だから怒られてるのにちょっと嬉しくなっちゃった。」

「馬鹿」

勘右衛門は背後から手を回すと、赤面した私をからかうように顔を覗き込んだ。

べし、手刀を食らわせる。

やっぱり嬉しそうに彼は笑った。

しかし、まるで平常心であるかのように振る舞っているけど、背中から伝わる鼓動は私が知るものよりもずっと激しかった。

彼なりに緊張してその言葉を放ったのだろうと思うと、さっきまでの不安定な情緒も忘れて、急な愛しさを感じさせた。

私も私で現金な奴だ。結局はお互い様。

「ちなみに今も怒ってるよ。」

「え゛」

「もっと可愛い格好してる時に返事したかったもん。」

「はは、そっか。失敗しちゃったなぁ。」

「ふふふ」

寧ろその締まらない感じが私達らしくて良いと思うけど。

はぁ、緊張したぁ……と、小さく呟いた彼を一瞥してそんなことを思った。