【忍たま】日々平凡【短編】 (ページ22)

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最終目的地-尾浜勘右衛門ページ22

残業明け、午前一時。ヘトヘトになって何とか辿り着いた玄関には私ではない誰かの靴が置いてあった。

「お帰り」

「いつの間に帰ってきてたの。」

「うん、ついさっき」

勘右衛門が指差す方には、まだパッキングされたままのキャリーバッグが放置されていた。

こんなドデカいもの買う人いるのかなんて思っていたけど、アジアから始まり対蹠地のブラジルまで飛び回っている彼にとってはそれでも小さすぎるくらいらしい。

急に部屋が狭くなったなと思う。

本当に帰ってきたんだ……。
まだ実感は沸かないけど。

そうですか、帰ってきたんですね。半年ぶりに。

一応恋人同士だというのに、私は彼が何を求めて何処に行くのか良く知らない。いや、知ろうとしなかったと言った方が正しいのかもしれない。同世代の大半と同じく世間体的に就職した私にとって、勘右衛門の生き方はあまりにも眩しすぎるから。

お土産の謎の陶磁器を受け取ったままぼーっとしていると、彼は首をかしげた。心配そうに眉を下げて、頭にポンと手を置く。懐かしい温度がした。

「大丈夫？仕事疲れた？」

「……ううん、大丈夫。」

「勘ちゃんに甘えてもいいのよ。」

「結構です。」

「久しぶりに会ったのにそっけないなぁ。」

プツン、何かが切れた音がした。

当たり前でしょ。この部屋だって二人で借りたのに、数えるくらいしか一緒に過ごしてない。

学生の頃だってそうだった。
音信不通になったこともある。

もう何年神出鬼没を繰り返してるんだか。

愛想尽かされたって当然だ。

残業のせいなのか、勘右衛門のせいなのかは分からない。ただ、何故だか妙に苛立って睨み付けた。

彼は一瞬目を丸くした。

数秒の沈黙が続く。