【忍たま】日々平凡【短編】 (ページ19)

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序章-尾浜勘右衛門ページ19

腐れ縁のコイツ。

違う大学に進学したっていうのに、どうしてか偶然に偶然が重なって今も一週間に二三度は顔を合わせるような関係にある。

「勘右衛門、火曜日にゴミ出しするの忘れたでしょ！」

「あ、ごめんごめん。忘れてた。」

「忘れてたじゃないよもう………こんなに玄関にゴミ溜めちゃってさぁ。」

「へへへ」

地元の大学から上京して就職した私。対して勘右衛門は都内某大学から院に進み、研究をしている。それだけ聞けば立派だが、お陰で不規則不摂生な生活が板についてしまったようだ。

幼馴染みながらだらしないのは許せなくて、頼まれてもいないのにこうして世話を妬いてやっている。まぁ、そんな訳だ。

「お昼作るけど昨日は何食べた？」

「お茶漬け」

「その前は？」

「ふりかけご飯」

「………それは料理とは言いません。」

「えー俺の得意料理だよ？」

マジか、百パーセント炭水化物生活。

呆れて物を言わなくなったのを彼は不思議そうに見た。「食育」ってやつをするために、私は22歳児を引き連れて近所のスーパーへと向かった。

.

「あれ、勘右衛門？」

豆腐やこんにゃくが並ぶコーナーに居ると、黒髪の青年が話し掛けてきた。どうやら彼の大学の知り合いらしい。

「兵助じゃん。住んでんのここら辺なんだ？」

「うん。最近越してきたんだ。それよりその人は勘右衛門の彼女？」

「違います。」

否定すると、怪訝な顔をする。そりゃそうだ。明らかに血縁者でもないのに一緒に生活用品の買い出しに来るだなんて、身体だけの関係……あるいはヒモのように思われてしまったのだろう。

横に目をやると勘右衛門と目が合う。彼も困ったように肩を竦めて、口を開いた。

「……うん、違うよ。」

「ふーん？」

「俺が片思いしてるだけだからさ。」

「へー」

(……………は？)

気を遣ってくれてそそくさと離れるご友人が見えなくなった頃、勘右衛門はそっぽを向いたまま呟いた。

「………本当は火曜日が燃えるゴミの日だって気付いてたよ。それと、一昨日のご飯はスーパーの惣菜弁当。」

「じゃあ何で、」

「Aが会いに来てくれないじゃん。」

お前が思うよりずっと、俺は報われない片思いをしてきたんだよ。どんな下らないきっかけだって探してしまう。

そんなことを言われたら、いつものような嫌味では返せないじゃないか。柄にもなく赤く染まった耳を見てそう思うのだった。