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伊作(………で、結局Aが四年生になってからは殆んど来なくなったんだよね。)
くのたまと関わることなんて全くない生活だから、彼女達のことを知るのは噂話だけだ。
漸く恋心を自覚したというのに会うことが叶わずもどかしい想いをしていた時も、Aが密かに忍たまの間で人気になっているという話を聞いて、「僕の方が先に見つけたのに。」と、人知れず苛立ったりした。
印象に残っているのは、学園長の思いつきで執り行われた実技試験の翌日のことだ。
張り出された成績優秀者の名簿の中、くの一教室唯一の成績優秀者として掲げられているのを見つけた時、自分のことの様に嬉しく思ったっけ。
伊作("戦輪 第二位 藤A")
食満「伊作、どうしてニヤニヤしてるんだ。」
伊作「うぇっ！？」
食満「伊作もそういうお年頃かぁ。」
伊作「違うってば。もー、最近の留三郎ってば直ぐそういうこと言うんだから。」
そんな思い出達も全てが今日で片付いてしまうというのは、何だか不思議だ。
伊作「思ったよりも執念深いのかなぁ、僕。」
そう呟くと、タイミング良く開いた襖。
目をやれば寝間着姿で本を小脇に挟む仙蔵がいた。
仙蔵「何の話だ。」
伊作「あの二人のことを聞いてさ…少しばかり昔のことをね。」
仙蔵「ほぅ…」
「痛むか。」と、仙蔵は聞く。
意味は違えど、普段は自分が聞く方だから聞かれる側に回ったことが可笑しく思えた。
仙蔵「……何が可笑しい。」
伊作「ふふ、何でもないよ。ただ、仙蔵がやけに優しいなぁと思って。」
仙蔵「留三郎に工具の本を返しに来たら、意味深なことを呟いている誰かさんが居たからな。」
伊作「心配は要らないよ。失恋も拗らせすぎると親心に変わってしまうみたいでさ。」
それは心からの言葉だった。
本当に伊作は後悔などしていなかった。
Aを好きになったことも、
兵助にその座を譲ったことも。
それは二人の後輩を信頼しているからというのもあるが、なにより一番大きいのは自分の将来を案じてのことだった。
ただ、「痛むか」と聞かれたら首を横に振ることは出来ない。
仙蔵「……忍とは辛いものだな。」
伊作「そうだね。」
深まった秋の夜、鈴虫はリリリと鳴く。
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かにかま(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます。ご期待に添えますよう精進いたしますね(^^) (2020年7月19日 15時) (
レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - まだまだ続きが楽しめるなんて嬉しいです…！受験とのことで無理なさらず…陰ながら応援しています (2020年7月18日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます。勿論、アイ・アム・独身と言えなくなる日まで書くつもりでいます。実は、書きたい展開の二つくらいしか書けていないのです……。今後ともよろしくお願いします(^^) (2020年7月18日 10時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - 毎日更新楽しみに読ませていただいています。ネタバレになってしまうといけないのですが、名前を呼んでくれてキュンとしました。ここまで来たら独身→既婚になるまで読みたいなぁ、なんて…。じれったい関係はずっと続くのか！？続きも楽しみにしています！ (2020年7月18日 8時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます。ゆっくりですが、きっと真っ直ぐに向き合える日がくると思うので、その日までお付き合いよろしくお願いします！ (2020年7月14日 13時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a062/
作成日時：2020年7月5日 19時
