月と久々知君と私と池 ページ36
久々知「それにしても見事な月だな。吸い込まれてしまいそうだ。」
「うん。他の忍たまも見てるのかな。」
久々知「どうだろう。」
彼に向けていた視線をまた月に戻す。
それは、恐ろしいくらいに凛としてその輝きを放つ。
きっと手が届かないほど遠くにあるはずなのに、こうも近くにその気配を感ぜられるのは何故だろう。
そんなことを考えながら
ぼうっと歩いていると…＿＿＿
「！？」
私は足場の石に気付かずに蹴躓き、バランスを崩す。すかさず水辺に傾いた身体を、久々知君が支え直してくれた。
久々知「足元には気を付けて。」
「あ、ありが…＿＿」
お礼を言おうと振り返れば、目と鼻の先に彼の顔があったので固まってしまった。
……よく考えてみれば今の状況だって危うい。
池に落ちようとした私を、久々知君が半ば抱き締めるような形で佇んでいるのだ。
まるで、他の誰かが見たら逢い引きの場だとでも勘違いされそうな………＿＿＿
みるみるうちに自分の顔に熱が集まっていくのが分かった。
久々知君も遅ばせながら自覚を伴ったようで、目を見開くとすぐに私から離れた。
久々知「ご、ごめん！俺、また…＿＿」
「あ、危ない！」
バシャンッッ
大きな水飛沫。
ゆらゆらと揺れる水面は、折角の月が散り散りになってしまっていた。
彼を引き留めようとして間に合わなかったやり場のない手を宙にかざしたまま、私は呆気にとられていた。
暫くすると、落ち着いた波紋の間から彼が姿を現す。
久々知「ぷはっ…」
「だ、大丈夫？」
久々知「あぁ。」
「ごめんね。私気付かなくて…」
久々知「いや、いいんだ。寧ろ助かった。」
「へ？」
「煩悩がね……。」と呟いた彼に小首をかしげると、そろそろ戻ろうかと手を引かれた。
「手…」
久々知「……藤にまで池に落ちられてしまっては困るから。」
「ふふ、そうだね。」
やっぱり大きくて固い掌は、あの日よりも確かに私の鼓動を高鳴らせるのだった。
(駄目だなぁ。変な期待をしてしまいそう……。)
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かにかま(プロフ) - 音かなでさん» わーーー、ありがとうございます！書き手としてはこの上ないお褒めの言葉を頂けて光栄です。まだまだ終わりそうにない二人のお話ですが、気長に付き合ってやってくださいませ。 (2020年7月5日 18時) (
レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
音かなで(プロフ) - ありがとうございます！凄い良かったです！かにかまさんの書き方というか言葉の選び方が温かくて読んでいてニヤケが止まりません！！これからも応援してます (2020年7月5日 17時) (レス) id: 73c7ce9b4a (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - j061191さん» コメントありがとうございます。そうですね、くっついてくれれば良いんですけど………。やっぱり人気なのは五年生サイドなんですね。参考にさせていただきます！ (2020年7月4日 22時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
かにかま(プロフ) - 音かなでさん» リクエストありがとうございます。なるほど、勘右衛門ですね！新鮮なので上手く書けるか不安ですが、私なりに頑張ってみようかと思います…！お気遣いありがとうございます。 (2020年7月4日 22時) (レス) id: c18fa87c81 (このIDを非表示/違反報告)
j061191(プロフ) - かにかまさん» 二人とも気持ちに気づいたので早くくっついて欲しいです！番外編だと、やっぱり兵助の一番側にいる勘ちゃん目線が読みたいですね〜。鈍そうな竹谷くんにも登場して欲しい(笑)続きも楽しみにしています！！ (2020年7月4日 21時) (レス) id: ad5fefd1f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かにかま | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/0660ea0a062/
作成日時：2020年6月15日 21時
